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バイマンスリーワーズBimonthly Words

続けるために 失敗がある

2010年09月

ある日、牧場に住む二匹のカエルが大きなバケツを見つけました。
中に白い液体が見えたので、思い切って飛び込んでみるとそれは牛乳でした。
牛乳のプールでひととき遊んで帰ろうとしたら、さあたいへん、壁が高くて登れません。
ジャンプもできず、泳ぎ続けないと溺れて沈んでしまいます。

しまった! 飛び込まなければよかった…。
このまま泳ぎ続けても意味がないと考えた一匹は、
とうとう泳ぐのをやめ、ズブズブと沈んでいきました。
もう一方のカエルは、あきらめずに泳ぎ、泳ぎ続けました。
泳ぎ疲れて、もうダメかと思ったその時、足に何かを感じたのです。
カエルは足に感じたものを足場に踏ん張り、外へ飛び出して助かりました。

カエルが足に感じたものは何だったのか?
なんとそれは、バターでした。
牛乳は攪拌を続けるとバターに変化します。
カエルは粘り強く泳ぎ続けて、生きる環境を作ったのです。

これは、ユダヤ人の寓話として伝えられている話ですが、
あきらめずもう少し続けたらいい結果が出たのに、
やめてしまったという話はよくあることです。

~ 継続は力なり ~
読書、禁煙、ダイエット…。社内の美化運動や社員教育…。
何事も続けていけば、成果が出るのは誰もが知っている。
しかし、それがなかなか続かないのです。

人は、心の中にいる人に動機づけられている

人はどんな心境になって、続けていることをやめるのか?
まず、「まあ、いいか」と軽い気持ちでやめてしまうことがあります。
これは、自分が立てた目標を、自分の都合で捨てる、あきらめる、ということで、
あまり人に迷惑がかからず、最も頓挫しやすい場合です。

次に、「やらされている」と感じている場合も続きません。
これは、誰かとの関係で本人が理解していないまま続けている状態です。
納得できる説明もなく、半強制的にやらされているので、いつやめてもおかしくない。
もし、続いていたとしても、それは不完全燃焼であり、力は発揮されていません。

やらされていると感じるのは、誰かが「やらせる」からで、
やらせようとするから、思い通りには動いてくれない。
動かないので文句をつけると、益々やる気をなくし、
やらされ意識が増幅するという、悪循環です。

そしてもう一つ、関西弁でいう「アホらしい…」という心境があります。
こっちがこれだけ頑張っているのに、この程度の人物だったのか、
バカバカしくて、やってられない…。
これは、信頼していた人の期待はずれな言動によって起こります。

人は皆、周囲の人に認めて欲しいという本能をもっています。
「よく我慢したね」という親からのねぎらいの言葉や、
「よくやった!」という恩師の一言でモチベーションは一挙に上がります。
ごく普通の選手だった女子マラソンの高橋尚子選手が、過酷な練習を続けたのは、
小出監督に才能を見いだされ、その期待に応えたいという願望が強かったからでしょう。

ところが、認めて欲しい人からの評価があまりにも低かったり、
何の反応もなければ、何となく裏切られたように心境になり、
双方の信頼関係が崩れてしまい、続かなくなります。

"うまくいかないからやめる"では、うまくいかない

しかし、単純に同じことを続けていては存続できません。
工夫を重ね、革新を続けることで、人や企業は成果を挙げるのです。
長寿企業の代表格「虎屋」の羊羹は、昔ながらの味を守っているだけでなく、
消費者の嗜好の変化に合わせ、近年は大幅に甘さを控えた味にしているといいます。

あの牛乳の中のカエル、ただ手足を動かしていたのではありません。
はじめの動きで小さな波を起こし、返ってきた波に乗りながら、
また返ってきた力を利用して、より大きな波を起こしていく…。
カエルは波の力を借りて、バケツ全体の牛乳を勢いよくかき混ぜていたのです。

景気の波や市場の変化は、同じようでも毎回違う形でやって来る。
変化に対する最適の方法を考え、波動を合わせることで勢いが生まれる。
経営ノウハウは変化の波をチャンスと捉え、工夫を重ねて蓄積されるのです。

もう一つ、経営を続ける上で心得ておきたいことがあります。
それは”うまくいかないからやめる”という考え方では、
いつまでたっても、うまくいかないことです。

新しく店を出したが、撤退せざるを得なくなった…。
ある商品を続けてきたが、どうしても採算がとれない…。
スクラップ&ビルドという欧米型の考えが常識になりましたが、
儲からないからやめる、という経営手法なら価値があるとは思えません。

うまくいかないものを遠ざけ、あっさり切り捨てるという考え方はいかがなものか。
成功するもの、自分にとって価値あるものだけを求めているようで、
いわば”ええとこ取り”の発想を根底に感じます。

失敗には意味があり、挫折にも味がある

経営とは、順調にいくことよりも、挫折や失敗の方が多い。
それは野球の打率のように、三割を打ったら上出来で、
残る七割は、ヒットのために必要な失敗です。

エジソンは電球の発明に一万回もの失敗をしたそうですが、
「私は失敗なんてしたことがない。上手くいかない一万通りの方法を見つけただけだ」
と語っています。
大リーグのイチロー選手がバッティングの極意をつかんだのは、
クリーンヒットではなく、セカンドゴロでアウトになった時だったという。

“失敗したら、やめなければならない”と自分を追い込まないほうがいい。
店を失い、あるいは商品を失ってしまうけれど、
よく考えると、失うことで新たに得られるものがある。
挫折を味わうことで、周囲の人のやさしさを感じることがある。
ああ、今回の失敗は、このことを私に教えてくれようとしていたのか…。
挫折や失敗の本当の意味に気づいた時、そのお店は報(むく)われ、商品は救われます。

“続けるために失敗がある”
失敗は、あなたが成長するために神が与えた良薬です。
失敗のままでやめてしまうと、何の効き目もないまま終わるでしょう。

“失敗があるから続けられる”
そう考えることができた瞬間、やめようと思っていたことに対して、
「もう少しだけ頑張ってみようか…」
そんな勇気が、ふっと湧いてくるかもしれません。

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