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バイマンスリーワーズBimonthly Words

不揃いの総持ち

2015年07月

「ええっ、なんでこんなに白いの…?」
平成の修理を終えた姫路城を訪ねた第一印象です。
今回は、漆喰壁の塗り替え、屋根瓦の葺き直しが中心で、
その姿は眩しいほど白く、白鷺城ならぬ「白すぎ城」と言う人も。

今回の訪問では大天守を支える東と西の心柱(大柱)も入念に確認しました。
昭和の大修理の際には東の心柱が本来の中心線から東南に37㎝も傾き、
江戸時代の初めは大天守の重さで心柱そのものが歪んでいたという。
その都度、多くの「支柱」を入れて心柱を支え続けてきました。

総重量 5700tもの大天守を支える心柱と、心柱を支える支柱たち。
それは社長が会社の中心に据わり、幹部社員が周りで支える姿そのものです。
重さに耐えかねた社長が中心からズレて傾いても、なんとか持ちこたえてくれる。
ところが「それは社長の仕事です」と、自分の責任範囲しか関心を示さない幹部がいる。

自分の意見を言わず、社長の顔色を見て態度を決めるような人や、
腹の中では背いているのに、表面的に従っている人もいる。
このような幹部は、支えているように見せてはいるが、
本当の意味で社長を支える役割は果たしてはいない。

「優秀な幹部が欲しい…」
中小企業経営者の心からの叫びです。
社内にいないので外から引っ張ってくるが…、続かない。
人を見る目がないのか、人材に恵まれないのか、と滅入ってしまう。

支える力とは 反発する力

では、社長を支える「優秀な幹部」とはどんな人か?
単に社長の手足となって働く人が優秀だとは思えない。
一方では、ムッとするほど反発してくる人もいるでしょう。
ところが、こんな人物こそが社長を支える優秀な人かもしれません。

唐の第二代皇帝の太宗が魏徴を諫議大夫(皇帝の過失を諌める役)に任命。
魏徴は皇帝の太宗に驕りや逸脱の兆候が見られるたびに遠慮なく直言し、
太宗は魏徴の諫言に耳を傾けた結果、善政を行うことができたという。
これが「貞観の治」で、魏徴はその後も皇帝を恐れず支え続けた。

太宗は魏徴が亡くなった後にこう語っている。
「魏徴はいつも私が嫌な顔をしても、かまわずに強く諌め、
私が悪いことをするのを許さなかった。これが、私が魏徴を重んじる理由である。」
皇帝が嫌な顔をし、癇癪を起こしても、己の保身を考えず、諌める姿勢を貫きました。

人は誰でも自分に心地よい人物は近づけても、
嫌なことを言う人物を避けたくなるのが当たり前。
しかし、”良薬は口に苦くして、病に利あり”。
太宗は敢えて諫議大夫を置き、諫言が言える人材を優秀としたのです。

支える力とは、相手からかかる力に反発する力です。
優秀な幹部とは、社長の意のままに動く人ではありません。
経営理念や価値観を共有し、同じようなビジョンを抱きながら、
ここぞという時、媚びず、へつらわず、厳しい姿勢の貫ける人ではないか。

そこで、肝心の心柱となる社長の問題です。
今の社長は、根っこが腐ってはいないか?
後継経営者は、社長としてふさわしい人物か?
“帯に短し、たすきに長し”では困ったものですが、
若くして経営者の条件を満たしている人はなかなかいません。

不揃いの総持ちで作り上げる

姫路城は昭和の大修理の際、西の心柱が芯から腐っていることがわかり、
これに替わる巨木を探したところ、地元播州 笠形神社の御神木が見つかった。
ところがこの御神木は上部が曲がっており、根元が腐っている疑いがあって保留に。
悩んだあげくに、下半分は遠く木曽山中から運び出されたヒノキとし、
その上に笠形神社の御神木の半分をつなぎ合わせたのです。

もちろん、優秀な経営者が一人で会社の中心に立つのが理想でしょう。
しかし、技術の本田宗一郎とマネジメントの藤沢武夫のように、
まったく違うタイプの経営者がお互いの弱点を補完しあう、
ツートップの経営スタイルでもいいのではないか。

一定の要件を満たしてくれるリーダーはなかなか見つかりません。
何でもできる”スーパーマン社長”では幹部や後継者が育ちにくく、
もしスーパーマンがいなくなると組織は一挙に機能停止に陥(おちい)ってしまう。
かといって、同じタイプの経営幹部を何人揃えても、支える力にはなりません。

日本を代表する宮大工の小川三夫氏はいう。
「木も人も不揃いの方がいいのです。
同じものが集まったら、ろくなことがない。
自分たちはこれを『木が総持ちで塔を支えている』と言うんです。
一本一本が強みを生かして支え合っている。だから丈夫で美しい建物が建つ。」

“総持ち”とは、建築業界の専門用語。
組み上がった木が総合的に絡み合うことにより、
単体の木以上の強度や耐久性を、全体に発揮する状況をいう。
生まれも育ちも違う”不揃いの人たち”が、総持ちするのが会社です。

人も組織も生ものであり、腐らせないためには不揃いがいい。
社長も、後継者も、幹部社員も、不揃いなのがいい。
~ 不揃いの総持ち ~
この思想は、強さと美しさの根源なのかもしれません。

命を大切に、個を活かす、総持ちの思想

経営の分野が高度になり、ワンマン経営ではやっていけない時代になりました。
特にIT分野における個人情報関連の問題では一瞬で存続が危うくなる。
それぞれの分野に強い幹部社員が、より高い経営者意識を持って、
“総持ち”で経営をしなければなりません。

ところが力不足の息子を後継者から外そうかと、悩む人がいる。
考え方が合わず一緒にはやっていけない、と悩み苦しんだ幹部がいる。
しかし一時期のちょっとした思い違いで、簡単にご縁を切っていいものか…。
それは”不揃いな個性”であって、根っこでは”総持ち”しているかも知れません。

今は不要であるが、将来に亘っても不要であるという確証はない。
“総持ち”という考え方には、今は弱くて、小さなものであっても、
皆で将来を支えあって、時間をかけて創り出すという意味もあるのです。

その昔、城主は天守に登って、大局観をつかんでいたのでしょうか。
そんな大天守の内側では、不揃いの柱たちが今も必死で持ちこたえています。
自然の石の姿をそのまま活かす石垣にも”不揃いの総持ち”があることに気づく。
すべての命を大切にし、個の特性を最大限に活かすという、先人の智恵が溢れています。

美しいお城も、補修や資金の問題で維持をするのが大変です。
どこの会社も、なんだかんだと言いながら、見えないところで踏ん張っています。
小川氏はいう。
「不揃いのものを扱うのは、木でも人間でも大変だ。規格化されたものは楽だ。
しかし、その不揃いの木を生かして一本一本組めば、千年越えても塔を支えているんだからな。」
ビジネスの世界に生きる私達の修行は続きます…。

姫路城の屋根瓦は白漆喰で”かまぼこ状”にして固めてあり、
一つずつ丁寧に、職人さんが愛情を込めて作ったことが見て取れる。
それを下から、また斜めから見た時、瓦が隠れて真っ白に見えるのです。

戦時中は、夜に飛来するB29の爆撃を受けないよう黒染の網で城を覆い隠したという。
白鷺を闇夜のカラスにした当時の人のご苦労とお城への熱い思いが身に染みる。
私達の時代に戦争をする国家にしてはならない、と心の底からそう思う。

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