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バイマンスリーワーズBimonthly Words

永遠の学び

2015年11月

「あと1時間で戦争か? ばかなことをしたもんじゃ なんてばかなことを!」
「(電子頭脳の)ハレルヤが決めたんですからな」
「なぜ機械のいうことなど聞いたのだ!なぜ人間が自分の頭で判断しなかった? ええっ!」
それは地球を愛し続けた 猿田博士の絶叫でした。

手塚治虫は「火の鳥:未来編」で人間がコンピューターに支配される世界を描きました。
想定は西暦3404年で人間を支配したコンピューター同士が対立し、核戦争を起こす。
初めて読んだときは完全にフィクションの世界だと、高をくくっていましたが、
最近の世の中を見ていると恐ろしいかな、現実味を帯びてきました。

それは「人工知能(AI:Artificial Intelligence)」の発達がもたらしたもので、
情報を処理するだけだったコンピューターに、高度な知能が備わりました。
人工知能を無人自動車、調理ロボット、作業ロボットなどに搭載すると、
新たな市場が生まれる反面、多くの雇用が奪われることが懸念されます。

「AIの発展は 人類の滅亡を意味する」
悲観論だとの見方もありますが、著名な学者がこう訴える。
人工知能が社員の働きを管理し、人事評価をし、給料を決める…。
そんな時代がすぐそこに来ている、と考えた方がいいかも知れません。

不安がいっぱいのマイナンバーが動き出しました。
当面は税金関係や社会保障手続きの事務に限定されていますが、
近いうちに銀行取引、医療や購買の履歴、思想や犯罪の管理にまで及ぶという。
マイナンバーの管理も、私たちの秘密を知りつくした人工知能が行うのでしょうか。

思い込みの「末那識」が成長を止めている

人工知能が発達した背景には、センサーの技術発展が大きい。
カメラによる画像や音声はもちろん、今では服に触れたときの高級感や、
くだものの噛みごたえ、腰の疲労感など、微妙な感覚も感じることができます。
人間が操作していた機械は、高度な状況判断のできるロボットに成長していました。

唯識論では、あらゆる存在は個人が構想する「八つの識(しき)」で成り立っているという。
人間は、眼・耳・鼻・舌・身(前五識)という五種類のセンサーで認識し、
前五識で得られた情報をもとに、六番目の「意識」で思考します。

そして、この奥に七番目の「末那識(まなしき)」と呼ばれる無意識の世界があります。
末那識とは、己に対する愚かさ、己へのとらわれ、己へのおごり、
そして己に対する愛着心など、自己中心で起こる心の作用で、
無意識に起こるものなので、コントロールが難しい。

集合写真を見たら、誰もがまず”自分がどう写っているか”を見るでしょう。
これは末那識にある心の働きが知らないうちに行動に表れるもので、
人は自分中心で、自分に執着していることを証明しています。
鏡に映る自分を見て、”どう見られるか”と思うのも同じことです。

人は誰でも自分を良く見せたい、認めて欲しいという心がありますが、
このような強気な心が過ぎると、自己中心的な判断をし、暴走しやすい。
一方で、失敗したくない、弱いところを見せたくないという心も持っており、
そんな弱気な心が経営者を支配すると、企業が成長するチャンスを逃してしまう。

高く飛び跳ねるノミをコップに入れてふたをすると、頭をぶつけて飛ばなくなる。
しばらくしてふたを取ると、ノミはコップの口より上に飛ぶことをしません。
人も同じことで”できない”と自分勝手に思い込み、成長を止めている。
自分の未来を決めつける、自分へのこだわりは何とかならないものか。

「阿頼耶識(あらやしき)」 こそが人間的魅力の根源

~ 明日死ぬと思って生きなさい ~
インドの指導者 マハトマ・ガンジー の教えです。
この教えに共鳴した一人の男が、情報化社会の革命児となりました。
東洋思想を経営の軸とした、アップルの創業者 スティーブ・ジョブズ です。

ジョブズはスタンフォード大学の祝賀スピーチでこう語りました。
~ 今日が人生最後の日かもしれないと考えると、いつか必ずその考えが正しい日が来る ~
明日死ぬかもしれないと覚悟すると、真剣に自分のやりたいことを考える…。
すると、自分へのこだわりを一切捨てた行動に出ることができるという。

生前ジョブズは、ビル・ゲイツ率いるマイクロソフトを批判して、
「私たちはそんな顧客のためにならない商品はつくらない」と公言。
自分の信念を貫く思想が iPod や iPhone という革命的な商品を生みました。
ジョブズの思想には、インド仏教にみる東洋思想が浸みこんでいたのです。

末那識の奥底にはもっとも大切な「阿頼耶識(あらやしき)」があります。
この八番目の識こそが、前五識・意識・末那識を生み出す根本であり、
自分が経験したすべてが記録され、蓄えてある、とてつもなく大きな「蔵」です。
そこには過去に学んだこと、考えたことのすべてが、善悪の区別なく混在しています。

輝かしい過去をもつ人でも、自分磨きを怠ると無意識の蔵は「腐敗」します。
辛くてみじめな過去をもった人でも、それを前向きな教訓に転嫁するなら、
「発酵」によって明るい未来を切り開く、質の良い蔵になるでしょう。
阿頼耶識の蔵が腐敗するか、発酵させるかは、自分次第ということです。

人は知らず知らずのうちに人格を形成し、品性をつくっています。
無意識な心の蔵が人生を左右している、と考えることもできます。
だからこそ阿頼耶識の奥底にしっかりとした良きものを貯めていきたい。
しかし、意識の届かない不可思議な世界であり、具体的にはどうしたものか…。

永遠に生きると思って学ぶ ~ 薫習の心 ~

唯識論には「薫習(くんじゅう)」という考え方があります。
「衣服に香をたき込めるように、人々のすべての行為が阿頼耶識に浸透する」
頭の中だけでなく、見たこと、聞いたこと、感じたことのすべてが浸み込んでいく。
あなたの心の奥にある無意識の世界に、薫習を重ねていくうちに人生は変わっていきます。

ガンジーの”明日死ぬと思って生きなさい”には後半があります。
~ 永遠に生きると思って学びなさい ~
なんと、心の奥底に浸み入る神秘的な言葉でしょう。
命尽きるまで、学びを続けることで無意識のまま薫習されていく。

“学ぶ”とは、自分の足りなさに気づくことです。
創業者の経営理念を現代風にアレンジして毎朝唱和するのもいい。
トイレ掃除をする、論語の素読をする、毎朝お経を読んでみるのもいい。
当たり前のようでも、人のためになりそうな、続けられることを実践する…。
すると自分の足りなさに気づき、もっと学びたいという「薫習」の心が宿るでしょう。

コンピューターが指示を出し、人間が従う時代は近いかも知れません。
カーナビも管理されていると聞いたので、躊躇したことがありますが、
GPSが創造したナビの世界を体験すると、あまりにも便利で手放せません。
街角の監視カメラ、メールの内容、ケータイの会話まですべてが掌握されています。

高度なセンサーで状況を認識し、記憶する能力は人工知能には勝てません。
かといって人間が考えることから遠ざかり、判断することから逃げてはならない。
だからこそ創造力に溢れる人間を育て、信頼と感謝に包まれた職場を創造しましょう。
そして、争いのない、人類と大自然が調和する世界に向けて、心の中を清浄に育んでいきたい。

医師でありながら漫画家の道を選んだ「手塚治虫」
自分へのこだわりを捨て去り、信念を貫いた人でした。
名作『ブラック・ジャック』でも自分の信念を語らせています。
「医者は人のからだはなおせても… ゆがんだ心の底まではなおせん」

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