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バイマンスリーワーズBimonthly Words

積極的な言葉を使おう

1994年05月

心の運用を良くしたり悪くしたりすることによって、人の人生は良くもなり悪くもなる。考え方や思い方が積極的であれば積極的なものが出来、消極的なら消極的なものが出来る。

我が心に憎しみ、怒り、悲しみ、嫉み、悶えがないか問うてみよう。これらはすべて消極的な気持ちである。こういう気持ちでいる人にはいつまでたっても本当の安心立命は出来はしないのである。

そして、この心の態度を決定し、結果において自分の人生や生命に大きな影響を与えるものは諸君が日常便利に使っている「言葉」というものであることを深く認識しなければならない。すなわち、卑劣な気持ち、弱い気持ち、憎しみ、嫉み、悔やみの気持ちや、また怒り、悲しみ、恐れという言葉や心持ちは、その人々の血液に毒素を生じ、生理的な不調和をきたす。積極的な言葉を表現した場合には、生命の一切が極めて状態の良い事実になって現れてくる。反対に消極的な怒り、悲しみ、悶え、迷い、そして悩みが遠慮なく口から出される場合には、もう怖ろしい結果を神経系統の生活機能に与えてしまうのである。何気なく出てくる言葉というものはあるものではない。どんな人の言葉ですら、その言葉になる前には観念が言葉を創るのである。

真剣に考えよう! 実際人間が日々便利に使っている言葉ほど実在意識の態度を決定するうえに、直接に強烈な感化力をもつものはない。このことを完全に理解し、かつこれを応用して活きるものは、もはや立派に人生哲学の第一原則を会得した人だといえる。それは何故か! それは、人生というものは、言葉で哲学化され、科学化されているからである。すなわち言葉は人生を左右する力を持っているからである。この自覚こそ、人生を勝利に導く最良の武器である。自分の心を積極的にして活きるという方向に自分の心を決定しなさい。そして、常に言葉に慎重な注意を払い、いかなる時にも、積極的以外の言葉を使わぬように心掛けることである。

中村天風の言です。天風は30才で不治の病といわれた結核を患うけれども、自らの精神力で病気を克服し、実業界で活躍の後、一切の社会的地位、財産を放棄して現在の天風会を創設しました。明治、大正、昭和と生き抜き、昭和43年92才で永眠するまで、皇族、大臣、事業家、俳優を初めとし、10万人に及ぶ人々に直接薫陶をしています。本文は天風の「言葉と人生」という数ある薫陶話の一部を要約したものです。天風の性格からその表現は剛毅で強烈なカリスマ性を感じますが、中小企業の運営を預かる私達にとっても重要なエッセンスが詰まっているように感じます。天風のいう言葉の重要性がどの程度ビジネス社会にも存在するのか探ってみましょう。

積極的な言葉とはどんな言葉か

中村天風のいう積極的な言葉とはどのような内容を指すのか考えてみましょう。

 

上司が部下の仕事の出来映えを評価するとき、多くの場合そのアラが見えてしまい、その問題点の指摘をしがちになります。良くても「AはすばらしいBがダメだな」とやってしまう。このような言葉を発している側はAもBも同じバランスで言っているつもりでも、聞く側にとっては後に言われた「Bがダメだな」の方が心に強く残ってしまいます。だからイヤな気持ちが心の中に蔓延し、改善意欲が湧かないのです。ここでは「AがすばらしいBがこうなればもっとすばらしい!」とやるのです。話し手の評価に変わりはありませんが、受け取る側は積極的にその言葉を理解し、改善しようという意欲が湧いてきます。「Aはすばらしいが…」と「Aがすばらしい!」とでは評価点が同じであっても相手に与える影響力に正反対の力が働くのです。

こんな言葉もあります。

経営者は孤独であるという言葉です。経営者が孤独に近い状態に追い込まれたとき、どのような意識を持つかが問題になります。積極的に理解し自立心旺盛な経営者なら、「孤独なんておセンチなことを言っておれる場合ではない。今オレが会社を引っ張らなくてどうするんだ」と意識するでしょう。反対に消極的なとり方をする経営者なら「経営者とはなんとつらいものだ、毎日が憂鬱になってしまう。誰か代わりにやってくれないか…」となるでしょう。この両局の意識の差は経営者の心の中ではミクロなものかも知れませんが、それが言葉となって組織の人々に伝えられたとき、組織全体に与える影響が天と地ほどの差となって現れてくるのです。リーダーの発する言葉の、組織に対する影響力は計り知れないものがあるのです。

次に幹部社員が使うべき積極的な言葉について考えてみましょう。

経営幹部の仕事は、最高意思決定権をもつトップの意識を好ましい方向に動かしながら自らの力で組織を引っ張っていくことにあります。そのためには上司であるトップを積極的な心理状態にし向けなければなりません。そこで「社長、一緒にやっていきましょう!」とやるのです。トップは常に様々な局面に遭遇します。その局面では不安や迷いといった消極的な心理状態に陥り易くなります。そんなとき、部下からの“一緒にやりましょう”という言葉で一挙に元気になってくるのです。元気とは元来人間に備わっている‘気’のことで、忘れていた積極的な気持ちを取り戻すことになるのです。

最近の私は新幹線型企業運営の重要性を強く説いています。新幹線型というのは旧来のディーゼル機関車などのような先頭車両のみの駆動ではなく、全車両にモーターを搭載した全車両駆動型の運営をいいます。トップが後続を引っ張るだけでなく、トップ以下の幹部社員が後ろからぐいぐいと押していくような態勢をとらない限り、厳しい経済環境を勝ち抜くことはできません。企業の盛衰を決定する経営幹部のこのような一枚岩の団結の実現を図るには、精神面の充実が不可欠です。精神面の充実には常に前向きな姿勢が前提条件なのです。トップがエンジンをフル回転させて前へ向かっているのに幹部が後ろを向いて成功した試しはありません。また、幹部が後ろからエンジン全開で押しているのに、トップが理由もなくブレーキをかけている姿はみられたものではありません。あなたの会社ではこのような消極的な心持ちによる情熱の浪費がないでしょうか?今一度問いかけてみて下さい。

人間というのは「陰」を嫌い「陽」を好むものです。しかし、人生や会社運営には「陽」もあれば「陰」もあります。「陰」の状態の時でもあなた自身の心の持ち方一つでその展開は大きく変わります。弊社のトップである清水は、これまで数え切れないほどの苦悩を体験してきました。しかし、それらの壁にぶち当たったときはいつも“為せば成る”と自分で自分に勇気を与えて乗り越えてきました。“為せば成る”という言葉がくじけそうになった精神を支えてきたのです。

“しめた発想”というのもあります。どんなにつらくて厳しい境遇にあっても“しめた!今、こんな状態だから次はこうなれる!”とすべてをプラス発想でとらえようとすることです。そのためには常から消極的な言葉を使わないようにし、自分の信じる積極的な言葉を口にしましょう。

経営者の辞書に消極的な文字はないのです。

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