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バイマンスリーワーズBimonthly Words

がんばれ!乾電池

1994年07月

Q.次の文章に出てくるモノはいったい何でしょう?

体は小さいけれど、本体を動かす原動力であり、それがなければ動かない。外に見せるものではないので普段は中にかくれている。コードがなくてもそれがあればどこにでも持ち歩ける便利なものになり、新しい製品にもどんどん活用されている。ただ、サイズが合わなければいくら高性能であってもまったく役に立たず、また、1個だけでは用をなさず、数個並べないと本体を動かせないこともある。定期的な充電が必要で、使いすぎると充電も効かなくなり、最後には、新しいものと取り替えられる運命にある。

A.答は‥‥充電式の乾電池でした。

 

でもよく読むと中小企業の経営者と似かよっているように思いませんか?小さな会社だけれど全体を引っ張る原動力・求心力であり、そのパワーによって会社の機動力が違ってくる。商品や社員が会社の顔であって、普段は表に現れない。営業、企画、生産現場、人事、財務など何にでも対応しなければならず、新しいことをやれば必ず推進責任者にならなければならないが、自由に動ける範囲は広い。頭がきれ、行動力があったとしても、その会社にフィットしていなければその能力やリーダーシップは発揮されない。また、休みもままならず、フル回転をするためにパワー切れ寸前でも何とか息を継いでいる。会社の存続を考えると、いずれ後進の者と交代しなければならないと思うが、適任者がいないため将来に期待を抱きつつ、仕方なく身を粉にして働いている。そして最後は‥‥。

充電式乾電池のメーカーからいくつかのメッセージが届いていますので、じっくり聴いてみましょう。

乾電池の力を借りて動いている人達へ

一般社員の方が素晴らしい技術や能力をもっていたとしても、その力を発揮する方向を間違えれば何の役にも立ちません。業績もあがらず自分の生活もよくならないのです。すなわちあなた達は乾電池のパワーをうまく直結されると素晴らしいことをやってのける電気製品なのです。乾電池のパワー不足を言う前に、電池のもつパワーを受け入れる準備ができていますか。

先ずはトップの言うことを素直に受け入れましょう。パワー源であるトップの人達とのコミュニケーションを自ら図っていくのです。それでうまく動かないのなら自分が乾電池になることを考えましょう。

乾電池なのに乾電池と思っていない人達へ

幹部なのに幹部としての腹がすわってない人を時折見かけます。乾電池の形をしており、自ら原動力であるはずなのに乾電池の箱に入るのを嫌がっている人達のことです。こんな人に限って乾電池の形をしていることは自慢にします。そんな人は1日も早く電池の箱に入って+-をつなぎましょう。決して反対に入れてはいけません。本体が反対に動きますから。次に、本体は何個の電池がないと動かないかよく考えましょう。不況の時はこれまでよりたくさん要ります。5個でないと動かないのにむりやり1個の電池で動かしていることはないですか?そうだとしたら、すぐ消耗し、本体が止まってしまいます。あなたがこれまで充電してこられた高性能な能力も活かされないまま自然消耗してしまいます。とにかく本体の電池の箱に入ることを恐れてはなりません。

「世のために田に出て濁る清水かな」という言葉があります。清水は濁ることを恐れず田に入っていってこそ稲を実らせ、人々を幸福にしているのです。

使いもしないのに「自分はハイパワー電池だ」とか「これまでこんな機械も動かしてきた」なんて昔のことを自慢しても始まりません。今があなたの使い時なのです。

酷使されてきた乾電池の人達へ

経営トップの人達の多くは、これまでの使いすぎが原因なのか、相当パワーが低下しています。とにかく早く充電しましょう。夏休みは充分とって下さい。不況だから休んでおれないといって、ジタバタもがいても結果に大差はありません。今はパワーを蓄積することです。普通の乾電池ではなくて、充電式の乾電池であることを忘れないで下さい。

充電方法についていくつかのヒントがあります。

休みを充分に取って気分転換を図るのも悪くありません。体力強化とストレス解消は経営者の必須科目であり、充電方法としては取り組みやすいものでしょう。

しかし、もっと大切な充電方法があります。それは気力の充実という充電です。これは自分でその方法をマスターすれば、親の電力からコードを引かなくても無尽蔵に湧いてくる天然パワーであり、ソーラー電池のように半永久的に使えるのです。

人間は、毎朝毎朝新しい宇宙エネルギーを勇気と信念という形で得ているといいます。そのエネルギーを受け入れようとするか拒否するかは本人の心掛けにかかっています。どんなにつらくイヤなことがあっても、今こうしておれることに対し「ありがたい!」という感謝の気持ちを保ち、自分に言い聞かせるのです。そして、「私はどんなことがあっても喜びと感謝と笑いをもって溌剌とした積極的な態度を貫くぞ」と、毎朝、そして仕事にとりかかるとき自分に誓うのです。そうすればつらいこと、嫌なことを取り除いてくれるエネルギーがどんどん体内や精神の中に注入されていくのを感じることができます。これが自己充電であり、気力の充実となっていくのです。

反対に、つらい、苦しいといった態度に終始し、メリハリの無い毎日を過ごしていると、本来注入されるべきエネルギーを自ら拒絶していることになり、なんら問題を解決しません。

経営者は現実というものを直視しなければなりません。眼前の問題も解決しなければならないでしょう。ところが、この問題解決主義というのは、総じて右肩上がりの環境下においてその効果を発揮するのです。問題を解決することによって予想以上の飛躍が実現できるからです。

ところが現在の環境下で問題解決主義はあまりいただけません。過去を清算する意味での問題形成は大いに意義がありますが、前向きに進もうとするときには暗いムードが漂い、パワーが大幅に減退してしまうのです。人間ですから誰だって今のつらい気持ち、悩みを人に聞いて欲しくなります。人に頼りたくもなります。でも心にふつふつと溜まったイヤなことを体外に出したら、後は積極的で溌剌とした態度を保ちましょう。他に力を求めて充電してもらおうという依存心は捨てましょう。そんな充電はすぐに萎えてしまいますから。

積極的な態度をとり溌剌としたトップの毎日こそが、社員の活き活きとした機動力の源になり、自己への再充電にもなるのです。

最後に自分の役割を全うした充電式乾電池は、取り替えのタイミングを間違えないようにしましょう。捨てられることを恐れてはなりません。恐れてそのポジションに固執し過ぎるとその接点は錆び、パワーが通じなくなり、他の乾電池に無駄な消費をさせ、ひいては本体もろとも動かなくなってしまいます。捨てられるより、自分を活かせる新たな道を自らさがすことを考えましょう。

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