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バイマンスリーワーズBimonthly Words

安心から信頼そして期待へ

2000年07月

日本マクドナルドが今年2月から仕掛けた平日のハンバーガー半額セールが予想以上に好調、その結果競合のハンバーガー店はもちろん、牛どんやファミリーレストランなど他のファストフード店を巻き込んだ価格戦争が熾烈を極めています。

ロッテリアはハンバーガーを65円、チーズバーガーを80円に下げて先行のマクドナルドと同一の半額セールで対抗。ファミリーレストランのすかいらーくは「おにぎり1個65円」と完全にマクドナルド価格を意識した新業態店を出店しました。牛どんチェーンも持ち帰りの牛どんを400円から300円を切った290円にまで下げています。半額のハンバーガー2個と飲み物で300円以内に収まるわけで、今やファストフード業界は一食300円以下の時代に突入したのです。

10年前のバブルピーク時はサラリーマンの昼食代の平均は1000円に近い水準にありました。その後バブル崩壊によるデフレにより500円あたりまで低下、97年の底割れ景気以降は500円を割って今や300円以下で済ます顧客を取り込む戦いになっています。

価格戦争もここまでくると行く末を案じるばかりです。

デフレによる価格下落もそろそろ底か…と思っていたところに、顧客の奪い合いによる値下げ戦争。デフレ環境に対応するための値下げは納得できますが、一挙に半額となると消費者にとってありがたい反面、これまでの価格はいったい何だったのかと不信感に近い感情も湧いてきます。コストダウン努力の結果を顧客に還元する姿勢は立派ですが、半額まで下げることははたして正しいことなのか? 逆に評判を落とし、立ち直れなくなるかもしれません。価格競争とは結局は消耗戦であり、本来の市場競争ではありません。競争は顧客の根本心理のところで戦うべきではないでしょうか。

企業はお客様のニーズに応える商品を提供し、美味しい、安い、品質が良いといった満足をお客様が得ることで成り立っています。ところがこれらの「顧客ニーズ」は購買のきっかけであって、商品を買う根本理由を反映している訳ではありません。私達はもう一歩突っ込んで顧客心理の奥底にあるものを掴んだ上で企業運営をしているのでしょうか?

まずは顧客に安心感を抱いてもらう「安心ビジネス」

たとえば「安さ」が支持される顧客の心理について考えてみましょう。

顧客が安い商品に向くのは、経済的な損をしたくない、自分が立てた予算内に収めておきたいという安心感を求める心理状態からくるものです。少ない懐であっても買えるんだという安心感があるからこそ支持される訳です。ですから安さを武器にする場合は明朗会計でなければなりません。いくら安そうでも総額でいくらになるかイメージできなければ顧客の不安心理は除けないからです。もちろん衝動で安さに飛びつく顧客もありますが、こんなビジネスはすぐに飽きられますから長続きはしません。

安心感に裏打ちされてはじめて成立する「安心ビジネス」はあちこちにあります。

食べるものを扱う食品メーカー、価格設定や品揃えにその店の姿勢が表れるスーパー、コンビニなどの小売店。ホテル、タクシー・バスなどのサービス会社。近くにある診療所。安くて腹いっぱい食える外食FCなどが安心ビジネスの代表といえます。

安心ビジネスの場合、「あそこの会社(お店)は安心だ」という顧客心理が購買のベースに潜んでいるのです。この安心感が得られなければ顧客は自然に離れていきます。

今回の雪印乳業食中毒事件では企業に対する消費者の反応はまこと厳しいものでした。生理的な安心感を失ったのは当然、事件後の雪印のまずい対応で会社に対する不信感にまで発展しました。一般に食品メーカーはブランドに対する安心感が購買のベースになりますが、信頼感まで失うと死活問題になりかねません。あの雪印ブランドマークは安心のマークから不信感のマークに変わってしまいました。

安心の上に信頼感が不可欠な「信頼ビジネス」

安心感の上に顧客からの信頼感が加わらないと成り立たないビジネスが「信頼ビジネス」です。先述の安心ビジネスにこの信頼感が備わると鬼に金棒というところです。

たとえば町の診療所は開いているだけでも住民に安心されて充分に経営が成り立ちますが、そこに信頼感が乗っかると地域住民にとってなくてはならない存在となります。

老舗デパート「大丸」の社是は「先義後利」。筋道や道理を考え利害はその後に考えよ、という教えで創業者の下村彦右衛門が儒学思想をもとに唱えたものといわれています。この思想教育を受けた大丸の店員はその昔、顧客の顔や好みはおろか家族構成まですっかり頭の中に叩き込み、新しい商品が入れば「あのお客さんにどうだろうか」と真剣に考えた

といいます。朝から晩まで得意先で商談し、風呂まで沸かして帰ってきた店員もいたそうです。いつも客に義を尽くすことは、一見商売とは結びつかないように思われますが、風呂まで沸かしてくれる店員にお客は心から信頼を寄せ、「よし!この店で買ってやろう」という気持ちになるのです。

奈良時代から続く羊羹の老舗「虎屋」。京都と東京を本店とし、海外にも支店を持つほど多くのファンに支持される虎屋の羊羹は決して安くありません。しかし、お店へ行けば昔から変わらぬ味と品質が必ずそこにあるという安心感と信頼感が顧客から支持されるベースになっているのです。

住宅建築なども信頼ビジネスの代表格です。一般の人が家を建てるのは一生に一度か二度で、分からないことの多い大仕事ですから信頼出来る業者に委ねるしかありません。ですから、住宅建築を扱う企業は財務状態を健全にし、未来永劫、品質完全保証という姿勢で事業に臨まなければ顧客からの信頼は得られません。

弊社のようなコンサルタント会社も信頼ビジネスの典型です。経営改善を進めるノウハウが商品ですが、顧客企業のすべてを知り尽くし今後の行く末を左右する事柄を扱うわけですから、秘密を守り、誠実に業務を進める相手でないと信頼して業務を任せることは出来ません。私はいつもこの精神を忘れないように社内のメンバーにはもちろん、自分に対しても言い聞かせております。

その他宝石や呉服など高額商品を扱う事業、手術で命を預ける外科医、美容院、学校、塾などのサービス業、いつも変わらぬ素朴な味の大衆食堂、商品の配達を託す物流業者、印刷会社、下請け加工業者などが信頼ビジネスになるでしょう。

顧客の心を動かす「期待ビジネス」

「安心ビジネス」から、顧客から絶大な信頼を得る「信頼ビジネス」になっても、企業が末永く存続できるかは別の問題です。安心とは顧客が自分で感じ、信頼とは顧客が企業に預けることで成り立ちますが、この二つは「心の安らぎ」がベースになっており、顧客の潜在的な心理の奥にある「心の動き」に応えなければ信頼感はマンネリと変質していくからです。顧客は新しいものへの期待、より高いレベルを求める期待感を潜在意識の中に持っており、その期待に応えていく「期待ビジネス」への変革が必要になるのです。

具体的には新商品、新サービスを提供することになります。期待ビジネスの場合、顧客の心は動きを求めていますからいつも新しいものがないと続きません。面白いメニューがなければ続かないインターネット通販、パチンコ店などギャンブル性のあるビジネス、株や投資を促進させるビジネス、デパートのバーゲン売り場やファッション性の高い商品については期待ビジネスになるでしょう。

期待ビジネスの中でも高いレベルにあるのが「感動を与えるビジネス」です。

たとえばプロ野球ファンは最高レベルの技術に裏打ちされたプレーを目の当たりにすることで興奮し、感動します。観客はひいきのチームが勝つことよりも、プレーを通じて興奮・感動する「心の動き」を期待して球場にやって来るのです。怠慢なプレーを見せられた観客は期待を裏切られ、離れていきます。このことは、高校野球が老若男女を問わず多くの人々から愛されていることが証明しています。ユニフォームを脱げばどこにでもいる少年達が、全力を尽くしてすばらしいプレーをこなす姿に人々は感動し、ファンになるのです。

スポーツの他に音楽、芸術・芸能などライブ性を伴うビジネスやコンピューターゲームソフトなどが「感動を与えるビジネス」と言えるでしょう。

期待ビジネスの場合、顧客の期待が高ければ高いほど満足感が大きくなる反面、失敗すれば期待はずれとなり、信頼をなくすどころか一挙に安心感まで失ってしまうリスクを秘めています。

顧客のニーズに応えるという言葉が使われて久しいものがありますが、顧客が購買に至る本当の理由について企業側はもちろん、当の顧客自身も気づいていないことが少なくありません。今は価格が購買上の大きなファクターになっているのは事実ですが、価格で競争することには限界があり真にお客様のためになっているとは思えません。

あなたの会社はお客様の根本心理から見たときどんなビジネスをやっているのでしょうか? それは安心感なのか、信頼感か、もしくは期待感なのか…。そしてその心理状態に充分に応えられるような活動ができているでしょうか?

私共も顧客企業の経営のパートナーとして皆様から充分に信頼していただける存在となることを目指し、このバイマンスリーワーズでも「首を長くして待っていたよ」と期待してもらえるような内容にするよう精進して参ります。

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