バイマンスリーワーズBimonthly Words
大欲は無欲に似たり
新年明けましておめでとうございます。
本年もバイマンスリーワーズ、そして新経営サービスをどうぞよろしくお願いします。
新春早々ですが、どうもスッキリしません。
それは、「儲けること」と「社会的責任」という行為は、やはり矛盾するのか?という問題です。
昨年はミートホープや白い恋人、赤福、吉兆など「食」に関する偽装が続々と明るみに出ました。
産地を偽り、期限表示を偽るというのは消費者への裏切り行為であり、退場処分を受けても仕方ないでしょう。
少しでも多く儲けたい、しかし、正規のやり方では儲からない、という矛盾を抱えた経営者。
これらの偽装行為の背景には、そんな経営者の心理がうかがい知れます。
偽装の奥には”もったいない”という善意的な動機があったのか、”バレなければ良い”という甘い考えだったのかは
よく分かりませんが、最終的には消費者を裏切る行為をしてしまいました。
それにしてもなぜ、正々堂々と真っ当な利益を上げようとしなかったのか?
経営者の真の動機を考えると、どうもスッキリしないのです。
経営の世界にも「戒律」がある
学校の成績は中位で、臆病な性格。しかし、並みはずれた道徳心の持ち主。
度重なる逮捕と投獄を甘受し、非暴力に徹してインドを独立に導いた指導者、マハトマ・ガンジー。
荼毘にふされた場所であるラージガートには、ガンジーの碑文が刻まれています。
『七つの社会的罪』 Seven Social Sins
1.理念なき政治 Politics without Principles
2.労働なき富 Wealth without Work
3.良心なき快楽 Pleasure without Conscience
4.人格なき学識 Knowledge without Character
5.道徳なき商業 Commerce without Morality
6.人間性なき科学 Science without Humanity
7.献身なき信仰 Worship without Sacrifice
この魂の箴言は、人類全体への普遍的なメッセージであると言われています。
日本の一部の経営者は、偽りによって消費者を裏切る”道徳なき商業”という罪を犯しました。
宗教の生活規律の中には、「戒律」と呼ばれるものがありますが、
やってはならないことが「戒」で、やらなければならないことが「律」。
今回、戒律を破った経営者達が背負ってしまった”社会的な罪”。
まさに、やってはならない「戒」を破り、”罪”を犯してしまいました。
ビジョンの裏に「野心」は禁物
~ 大欲は無欲に似たり ~
「大望を持つ人は小さな利益にはこだわらないので、欲が無いように見える。」
という意味のことばですが、これを経営に置き換えると、
「器の大きな経営者は大きな利益を目標としているので、小さな利益にはこだわらない…。」
そんな意味になるでしょうか。
介護保険が導入されるにあたって、誰よりも早い全国展開でシェアを握り、介護事業の最大手に登りつめた
経営者がいました。ところが、結局うまくいかずに事業をバラ売りしました。
プロ野球の球団が欲しかったが買えず、続いてテレビ局を買い求めたがこれも買えず、ならば議員になって
日本を動かそうと選挙に出たがあえなく落選、という経営者もいました。
硬直化したプロ野球の体質にメスを入れファンが経営に参加できるようにしたい、高齢化社会に向けて
介護支援サービスで社会的貢献を果たしたい、など小さな利益にはこだわらない、大きなビジョンをもった
経営者達でした。
ところが、その表向きのビジョンの裏側に、経営者の私的な欲望、言い換えれば「野心」のようなものが
見え隠れしていたのを、あなたも感じとっていたのではないでしょうか。
そうです、企業のリーダーが打ち出すビジョンの裏側に、財産欲や支配欲など私的な欲望があると、
いつか必ずしっぺ返しがあるのです。
これは、経営者がやってはならない「戒」になります。
それでは、経営者が打ち出すビジョンの裏側には何が必要なのでしょうか?
大欲を実現するための「利益」は絶対条件
京セラの稲盛名誉会長や日本電産の永守社長は、ベンチャーから事業を起こして日本を代表する企業を育てあげました。
お二人に共通する企業家精神は、単純明快です。
「最大限の収入をあげ、費用を最小限に減らすこと」 それは、材料代をはじめ少額の事務用品にいたるまで、
一円たりともムダをしないという徹底ぶり。
創業時はもちろん、大所帯になってからも徹底した利益意識を全社員に浸透させることで、現在の経営を実現したのです。
逆もまた真なり! 「小さな利益が得られない人に、大望は叶えられない」 そうです、経営者のビジョンの裏側に必要
なものは「利益」なのです。
もちろんこれは私的な金儲けではありません。
大望を実現するに足る、企業の利益をあげること。
これが経営者のやらなければならない「律」なのです。
費用が上がってきたら、収入を上げる。 収入が上がらなければ、費用を下げる。
当たり前のことながら、こうやって採算バランスを取ることで利益が確保されるのです。
ところが…、実態は赤字なのに何ヶ月も、時には何年も具体的な手を打たない経営者がいます。
なぜ、こんな当たり前のことができないのでしょうか?
よく思われたいという欲求が判断を過つ
人は誰でも、周りの人からよく思われたい感情をもっています。
経営者が成長路線にいる時は、周りからチヤホヤされていい気分になるでしょう。
ところがいずれ赤字になって、事業の撤退や縮小を余儀なくされる時がやってきます。
そんな厳しい局面でも、自分をよく見せたい、いい評価を得たいという思いが捨て切れず、
何の手も打たないまま、ズルズルと時間を過ごしているのは経営者としてバランスが良いとは思えません。
経営者が社内の人や業界、銀行筋から評価してもらおうと考えるのは、やめましょう。
よく思われたいという心理が、偽装行為を招き、判断の過ちを招くのです。
経営者の仕事とは、どれだけ成果を出しても、誰かから誹謗、中傷される運命を背負っています。
ならば、評価してもらうために経営をするのではなく、己の信ずるところを貫く経営をしましょう。
そう考えると肩の上に乗っかっていた荷物が下りたようで、すっきりしてきました。
大欲を抱いている経営者は、自分をよく見せたいという欲望は持っていません。
これが、本当の「無欲」ではないでしょうか。
インフレ誘導が顕著です。 原油に始まった値上がりの波は、価格転嫁が容易でない企業の利益を直撃することでしょう。
経営者が利益に対して弱腰になると、全社員が弱腰になり、儲からない会社になっていきます。
ボヤーッとしていると、インフレの嵐にのまれて転覆します。
しかし、どんな時代でも採算がとれる”技”を磨くチャンスに突入したのだ、とも考えられます。
具体的には、値上げする、値引き要求を拒否する、取引業者へコストダウンを要請する、などが考えられますが、
どれも容易なことではありません。
だからこそ、「社会的責任を果たすためには、どうしても利益が必要なのです」という、あなた自身の力強い
メッセージが期待されるのです。