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バイマンスリーワーズBimonthly Words

子どもたちの 子どもたちの 子どもたちのために

2011年01月

新年あけましておめでとうございます。
今年も新経営サービス、そしてバイマンスリーワーズをよろしくお願いします。

天才漫画家、手塚治虫のライフワークはなんと言っても「火の鳥」。
その「未来編」では、人類が自らの支配を電子頭脳に委ねる場面があります。
私たちの子孫は、先人が創造した電子頭脳に支配されてしまうというストーリー。
ところが今、手塚治虫が鳴らした警鐘は現実のものになっているように思えてなりません。

コンピューターがはじき出す検査データで診察し、
患者の顔もろくに見ないで、処方箋をだす医師がいます。
これでは医師ではなく、コンピューターが診療しているようなもの。

百歳以上のお年寄りが日本中で行方不明になっていた問題も、
コンピューターに入力さえすれば管理できたと錯覚していたのか。
お役所の仕事が現場の情報より、数字やデータを重視しすぎた結果です。

バーコードで管理されている食品には、
賞味期限・消費期限が明記され、店頭に置かれます。
おかげで消費者は分かりやすく、買いやすくなりましたが、
腐ってないか、まだ食べられるか、という感覚は確実に鈍っています。

もはや当たり前のように使うカーナビや、GPS搭載のモバイル機器。
見知らぬ土地を走るのに、悩むことなく次は右、次は左と便利です。
しかし、道を教えてもらうことに慣れてしまった経営者が、
先の見えない会社のハンドルを切れるのか心配です。

自分でつくったものには愛情がわく

作家であり、福聚寺住職を務める 玄侑宗久氏 が語っています。
「禅では人間の心が活発に働くことが大事だと考えます。
しかし、システム化が進むと、どうしたらよいのか、
あれこれ思い悩むことがそもそもなくなってしまう。心が死んでしまうのです…」

現在の千円札には野口英世、五千円札には樋口一葉の肖像がありますが、
よくご覧いただきたい、その表情に人間らしき面影はありません。
二人とも、精気を抜かれたロボットのように描かれている。
これは人間をロボットのように管理された支配下に、
日本国民が置かれているメッセージなのか…。

今はどのような商売でも、商品別、顧客別、時間帯別など、
システム化された売上情報が分析され、瞬時に経営者の手元に届きます。
ところが、高度な情報処理技術をもっているのに、デパートの業績は回復しません。

一方、宮城県の食品スーパー「主婦の店・さいち」は、小さいけれども元気なお店。
一店舗だけで手作りの「おはぎ」を一日平均5千個、土日には1万個以上も売ります。
売上の5割を占める惣菜には、レシピ、つまりマニュアルがなく、口伝えで教えていく。

「さいち」の佐藤啓二社長・澄子専務(共に75歳)は、
自ら考える力をつけ、お互いがつながって生きる「心の経営」が信条。
惣菜部門を立ち上げた 澄子専務は「お惣菜は心で作るもの」と言い切ります。
惣菜作りのノウハウは、すべて自社で考えたもので、専門家の教えは受けません。

「さいち」の社員は聞く耳を持っているが、それはお客様の声を聞く耳。
先生や専門家には聞きにいかずに、自分たちで考える。
そうすると自分で作ったものに愛情が湧いてくる…。
子どもへの愛情と、商品への愛情は同じだという。

自ら考え、お互いのつながりを大切にする精神

岡山県にある、ハチミツ・自然食品などを扱う山田養蜂場に行きました。
通信販売を主体とした中小企業ですが、その社会貢献に対する取り組みに感服しました。
その活動は植樹、風力発電、海外の教育支援など、環境や文化に関する様々な場面にわたります。
そして、次世代を担う子供達に「豊かな心」を、との願いから日本中の小学校に本を寄贈し、
みつばち文庫と名づけたその数は延べ37,250校、44万冊になります。

寄贈する図書には条件がつけてあります。
自然や環境について楽しく読書をすることで、
・自ら考える力をつけることのできる図書。
・すべての生命は、お互いにつながりを持って生きていることを理解してもらえる図書。
・命の尊さを知ることにより、相手の立場に立って物を考え、他者を思いやる心を育てる図書。

いかがでしょう…これらは子供たちが読む前に、
私たち大人が先んじて考えるべきテーマではないでしょうか。
東北・仙台には、心の経営を実践する「主婦の店・さいち」があり、
岡山には、自ら考え、お互いのつながりを大切にする山田養蜂場の精神が輝く。
それぞれのポジションで、時代の濁流に巻き込まれないよう精一杯に踏ん張っている。

科学技術の進展でシステム化された社会を元に戻すことはできません。
このままだと、科学技術の洪水にのみこまれてしまわないか、
人間本来の「豊かな心」を失わないかと、憂慮されます。

いつかは「生命の尊厳」にたどり着く

社会貢献に取り組む山田養蜂場の根底に流れる思想はただ一つ。
~ 子どもたちの 子どもたちの 子どもたちのために ~

友人の話によれば「そろばん塾」に通う子供の数が増加傾向にあるという。
そろばんの効果は絶大で、計算能力が高まるのはもちろん、
学力全体が向上し、何よりも集中力が鍛えられます。
集中力という意味では「書道教室」の復活も待たれます。

「さいち」の澄子専務は、社員のことを「うちの子」と呼んで憚らない。
商品に愛情を注ぎ、昼間「うちの子」をしっかり教えるために、
自分は毎日、なんと午前1時30分には調理場に入るという。

医師でもあった手塚治虫の人生を貫いたテーマは「生命の尊厳」。
未来を担う子どもたちに「生命の尊厳」を伝えるためには、
医師よりも、漫画家がふさわしいと考えたのでしょうか。
死の直前まで、作品を通して訴え続けた人生でした。

システム化された高度な社会を維持しつつ、
そこに生きとし生けるものの、生命の尊厳をいかに守るか…。
目先の利益にとらわれ、一人の人間として誤った判断をしていないか。
天から与えられたこの命、私たちはいったい何に使おうとしているのか…。

情報洪水の中で時間に追われ、効率性や成果ばかりを気にする現代人の生活。
人生をかけた業を通じ、未来のために何が遺せているだろうか?
本業で無理なら、どんな形で社会貢献ができるだろうか?

私たちは、そんな問いかけをしながら生きている。
限りある、一回きりの人生だから…。

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