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バイマンスリーワーズBimonthly Words

心の中を鍛えよう

2013年01月

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本年も新経営サービス、そしてバイマンスリーワーズをよろしくお願いします。

空前のランニングブームです。
人気の市民マラソンはすぐに定員になり、
有名なランニングスポットは大量のランナーがひしめく。
そんな中、企業経営者の姿も多く見られるようになりました。

自分で設定した目標だから、苦しくなったらやめてもいい。
しかし簡単にやめるわけにもいかず、何度も心が折れそうになるが、
そんな苦しみを乗り越えた後の感動もひとしお。
走るうちに雑念が消え、無心になっていることもしばしばで、
“走る座禅”といったところでしょうか。

寒い日の朝に早く起き、勉強したり、走ったり、早朝出勤をするのはつらい。
もう一人の自分が、「そんなに無理をするなよ…」と耳元でささやく。
資格試験への挑戦や、健康への誓いを胸に、今年こそは達成するぞ!
そんな年頭目標を横目で見ながら…、いつの間にか挫折している自分がいる。

人間の心は、もろくて弱い。
しかし、負けることを強烈に嫌う人がいる。
何がなんでも達成する!という強靭な精神力をもった人がいる。
そんな人は、どうやって強い心の自分に鍛えていったのか?

毎日が 命をかけた 不退行

比叡山延暦寺の大阿闍梨 酒井雄哉 師は
「千日回峰行」を二度も満行しました。
千日回峰行は「歩行禅」といわれ、比叡山中を約7年かけて約4万キロを歩く。
歩きながら何かを思いついたり、智恵が生まれることもあり、
回峰行は歩いて座禅をしているのと同じです。

700日の回峰行を終えると、修行のクライマックス「堂入り」に入る。
9日間、断食断水、不眠不臥で不動明王の真言を唱えるというもので、
その過酷さは、終盤になると瞳孔が開き、死臭まで漂うという。
なぜ大阿闍梨はこんな過酷な修行に挑戦したのでしょうか?

酒井師は決してエリートの僧侶ではありませんでした。
ソバ屋、株屋、営業マンなど職を転々とするがうまくいかず、
縁あって比叡山の二人の師にめぐりあい、人生後半の40歳で得度。
そこから修行が始まり、54歳と61歳の時に千日回峰行を果たしました。

なんと強い精神力の持ち主でしょう。
「もうやめないか、やめたら楽になれるぞ…」
こんな甘い誘いをする、もう一人の自分がいたでしょう。
しかし、この修行の「楽」は、我々凡人が考える「楽」とは意味が違います。

千日回峰行は「不退行」ともいわれ、
いったん行に入ったら途中で辞めることは許されない。
首吊り用の死出紐を肩に掛け、自害用の短刀を腰に差して出発する。
行を続けられなくなったら自害せよ、というのがこの修行の「楽」なのです。

楽は苦にあり 苦は楽にあり

経営とは、なかなか思い通りにはいかないもの。
苦労せずに一度にガバッと儲けたいところですが、
お客様の売上げを一つひとつ積み重ねるしかありません。
組織の問題も十把一絡げでいっぺんに解決したいけれども、
一人ひとりの社員の心に応えるのが中小企業のあり方です。

経営者は、自分が楽をする政策をとってはなりません。
楽な政策は、辛いことから逃げ、常に要領よく生きる人間を作り出す。

たとえば、歩合制の給与システムは会社が損をしない仕組みであるため、
モラルが低下し、品質やサービスも悪化する傾向に陥りやすい。
一年目の年収を最大1000万円で新卒者を募集する会社がありますが、
これもお金で問題解決しようとする姑息な手段としか思えない。

逆に困難から逃げず、正面から向き合った人の足腰は強い。
伝統や歴史の重みを背負い、革新性を失った組織を預かる後継者。
ときには逃げたくなって天を仰ぎ、これではダメだと心の奥にムチを打つ。
そんな悪戦苦闘をしながら、泥沼の中を歩み続けるリーダーたち。

~ 楽は苦にあり、苦は楽にあり ~
極限の苦しみを体験した人には、生きているだけで喜びがある。
本当の楽しみは、苦しみを体験することで得られ、
楽を続けていると、いずれ苦がやってくる。

最後には精神力がものを言う
作家 村上春樹氏が著書で紹介しているメッセージです。
Pain is inevitable Suffering is Optional
~痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(自分次第)~
これは、あるマラソンランナーが走っている時に唱えるマントラ(真言)だという。

大阿闍梨に「なぜ千日回峰行を、二度もやったのですか? 」と聞くと、
「他にやることがなかったの。他にやることがあれば、
他のことやってたかもしれないけど。」
と、あっけらかんと語っています。(「一日一生」朝日新聞出版 より)

この受け答えから大阿闍梨の心境を想像することなど実におこがましい。
しかし、後世のためにあえて考えあぐねると…、
大阿闍梨は千日回峰行そのものが楽しかったのではないか?
とくに二回目は、苦しんでいる自分を、楽しんでいたのかもしれない。

精神論で経営はできません。
しかし、最後には経営者の精神力がものを言う。
非難され、追い詰められ、苦しい経営が続くかも知れない。
そんな苦しい状況を耐え抜く精神力が企業を支えているのです。

うつ病の患者は、この10年で2倍以上の100万人を超えている。
身体は元気なのに、心の問題で仕事ができないというのは、
本人にとっても辛く、企業にとっても痛手です。

これからの時代は身体と共に、心の中も鍛えることが重要になるでしょう。
小さな事柄からでいい、逃げない、あきらめない、先送りしない。
人間関係においても、甘えず、頼らず、求めない。
そんなわずかな自覚から心の中を鍛えていこう。

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