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株式会社新経営サービス

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バイマンスリーワーズBimonthly Words

人生の波

2017年09月

太陽暦の二十四節気では「夏至」のパワーが最大で、
その後は「冬至」に向かって減退していきます。
一方、月の満ち欠けを基準にした太陰暦では、
満月がピークでその後は減退に転じます。

太陽や月の変化に波があるように、
海や川、空気、音、電気などにも波がある。
増加と減少、成長と衰退、上昇と下降をくり返し、
こう考えると、すべてのものに波があるといってもいい。

経済活動にも波があります。
3~4年の周期から50年の周期など、
景気の波にもいろんな種類があるようですが、
今、日本の景気は上りか下りか、どうなのでしょう。

企業の成長にも波があります。
右肩上がりで成長してきた企業でも、
いつかはピークを迎え「下り」に向かう。
そこで、打つ手を間違うと衰退し、破綻する。

経営者は業績の低下を極端に嫌います。
なんとかしようと、あの手この手を繰り出すが、
一旦、ベクトルが下を向くと何をやっても上がらない。
最後はにっちもさっちもいかなくなって、粉飾や隠ぺいに走る。

登山でケガをしやすいのは上りでなく、下山であるという。
業績が上向いている時に経営者はいなくてもいい。
下降線に入ってからが本領発揮なのですが、
焦らず、迷わず、的確な判断をするのは難しい。

重大局面における「決断の縁」とは何か

エアバックの「タカタ」が巨額の負債を抱えて破綻しました。
製品の欠陥によるリコールの対象車は1億台に及び、
超優良企業がなぜ、一挙に凋落していったのか…

製品の欠陥は10年以上も前から認識していたという。
リコールの決断には、納入先との関係や社内の調整など、
複雑な問題、難題が絡んでいるため、一筋縄ではいきません。
しかし、もっと早く対応すれば違う結果になったのは明らかです。

表向きの業績は上昇の波に乗っていたが、
すでに企業体質は悪化し、下降していたのです。
事実を隠ぺいし、欠陥製品を提供し続けたその罪は、
一兆円を超える負債となって津波のように襲いかかった。

この事件を大手企業の経営者の問題と捉えてはなりません。
公開企業とはいえ、タカタは典型的なオーナー企業で、
自動車部品を扱う業態は、中小企業そのものです。

リコール処理の時期や方法を間違えると、
消費者や関係者に莫大な損失と迷惑をかける。
信用は吹っ飛び、悪徳経営者の烙印を押されます。
順調だった経営者人生は一挙に下りに向かうのです。

経営者の人生にも波があります。
それは、上りよりも下りの波が難しい。
業績の悪化や、世間への多大な影響が明らかな時、
人生の下りに向かうそんな時こそ経営者の本領が試される。
さあ、このような重大局面における「決断の縁(よすが)」は何なのか。

人生の前半は「目標達成型」後半は「天命追求型」

ある経営者から興味深い話を聞きました。
人生のスタイルには、
「目標達成型の人生」と「天命追求型の人生」
の2種類があるという。

「目標達成型」とは、たとえば10年後の夢や目標を設定し、
その目標を5年、3年、1年後の具体的目標に落として、
夢を実現する生き方で、欧米型といえるでしょう。

一方の「天命追求型」は、まず目の前の仕事を有難く受けとり、
持てる力を精一杯に発揮していると次のステージが用意され、
社会への貢献に気づく生き方で、極めて日本的です。

今のビジネス社会の環境は「目標達成型」。
特に大手企業の経営者は、多くの社員を束ね、
競争原理を駆使して目標を達成させる必要があります。
目標の設定~達成をくり返す、マネジメントの手法です。

ところが一人の人間として考えるとどうか?
芸能やスポーツのプロ、資格試験や社内昇進など、
世の中には様々な目標があるが、達成するのは一部の人。
多くの人の懸命な努力は報われず、無念の坂を降りていく。

新規事業に失敗し、借金を残した人。
努力してもなかなか目標達成できない人。
会社に損失を与え、後ろめたく思っている人。
後継者としての役目が果たせず、もがいている人…

一方では目標を達成しても落ち込んでいく人がいる。
大きな業績を残し、周囲の賞賛を浴びたのに、
新たな目標を見失ったのでしょうか、
大海で漂流し、助けを求めているのです。

人生は後半が楽しい

人生の波は何度もやって来ます。
目標を達成するたびに嬉しく思うが、
新たな目標設定がだんだん難しくなっていく。
経営者になったら目標達成型を見直してはどうか。

企業のトップに立ったら「天命追求型の人生」がいい。
業績が上りであれ、下りであれ、何も恐れない。
目標よりも大切なものが、その遠い先にあり、
心に迷いなく、正しい方向に誘導してくれる。

経営者はどんな状況に置かれても、
その時に最もふさわしい決断が求められる。
日常は目の前の課題に全力でぶち当たればいいが、
いざという時の決断の縁は、遠い先の「天命」に従うがいい。

「自動車部品でクルマ社会の安全に貢献する」
これがタカタの使命であり、天命でなかったか。
皮肉にも、天命とは真逆の製品を提供してしまった。
社会貢献よりも何を優先させたのか…、残念でなりません。

人生の後半に入るとなぜか、心の底から世の中に貢献したいと思う。
~ 四十にして惑わず 五十にして天命を知る ~
未だ、孔子の心境の入口にも立てないが、
真似事ぐらいはしてみたい。

人生は後半が楽しい。
前半では成功も失敗も体験し、
楽しいことも辛いことも経験した。
集大成となる後半の経営人生を味わいたい。

太陰暦と太陽暦の間には年間で11日も誤差が生じるため、
月の変化と太陽の動きの両方を参考にした暦ができた。
これが陰と陽を組み合わせた太陰太陽暦(旧暦)。
双方の利点を活かした発想はみごとの一言です。

「芋名月」とも呼ばれる中秋の名月は、旧暦八月十五日の夜(十五夜)。
神酒と里芋などを供えて月見をする、今年の十五夜は10月4日。
太陰太陽暦の価値を知る人は、今も大切にしています。

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