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バイマンスリーワーズBimonthly Words

ゆでガエル理論

1992年03月

最近のビジネス社会で「ゆでガエル理論」なるものがよく言われるようになりました。

熱いお湯にカエルを入れると驚いて飛び跳ねる。ところが常温の水にいれ、徐々に熱していくとその水温に慣れていく。そして熱湯になったときには、もはや跳躍する力を失い飛び上がることができずにゆで上がってしまうというのです。

私たちはこのゆで上がったカエルを笑うことはできません。ビジネス社会に生きる私たちも、慣れた環境に浸りすぎて変化に気づかず、変化だと察知できた時点では遅すぎて手が打てなくなってしまうことがよくあります。

管理者にみられるパターン

私は顧客企業の営業会議によく出席させていただきますが、ベテランの営業マンほど従来の得意先に固執する発言をされます。「ここは私でないと売上が落ちるのです」とこれまで自分が築いてきた環境を守ろうとされます。しかし、担当者が変わったために会社がつぶれたという話はありません。また中小企業ではこのようなベテラン営業マンが営業マネージャーを兼任しているのが実態です。プレイングマネージャーというカッコいい?言葉がありますが、これはマネージャーができないからプレイングを兼ねているのです。これまでに慣れているプレイングを実践するのは、実は本人にとっては安易なことで、新たなより高いレベルの仕事へ挑戦する意欲を持ち得ないともいえます。このようなベテラン営業マンも新しい仕事にチャレンジしない限り、老体にムチ打つ平凡な御用聞き営業マンになってしまうでしょう。

経営幹部(役員)にみられるパターン

役員になるまでは社長に対し情熱的に会社改善の提案や直訴をしていた人が、役員になったとたんに風見鶏のようにおとなしくなる人を見かけます。社長といえども間違いを冒すことがあるのです。その社長の間違いを役員という立場になると指摘しにくくなり、誤った政策が打たれ、会社がおかしくなっていくのです。これは、これまでは愛社心であったものが居心地の良い役員になったために愛自心というぬるま湯に浸ってしまったために起こるケースです。

経営者(トップ)にみられるパターン

経営者も慣れた環境に浸りすぎてその変化に気づかないパターンがあります。

1つは、わがままな経営が通ってしまうために社内の変化に気づかないタイプです。三越デパートにおける岡田社長解任事件がその代表例でしょう。企業にとって不当な意思決定や政策がまかり通るようになったため、社内革命が起ころうとしていても気づけない。自分にとってはぬるま湯だけれど本当は熱湯になっていたことを岡田社長は気づけなかったのです。

もう1つのパターンは、外部環境の変化に気づけないタイプです。自社の業態や事業分野を環境に合わせて変化させていかねばならないのはわかっていても、思いきったことができない。中途半端に利益が出ると「やっぱり今のやり方でいいんだ」と自己満足してしまうことになります。この自己満足が一番怖いぬるま湯なのです。

多くの経営者は「我社の社員はぬるま湯に浸っている」「このぬるま湯体質から脱却しなければ…」というようにお考えです。しかしよくよく考えると御自身も違った意味でのぬるま湯におられるケースが多いのではないかと思います。社員は結局のところトップの仕事のやり方を見習い、トップと同じことをしてしまうものです。

不況感が一段と強く感じられるようになりました。この時期に嵐が通り過ぎるのを待つかの如く、じっと耐えるのも悪くはないと思います。しかしその前に自分自身が環境の変化に敏感に反応でき行動できる人間となっているか、ゆでガエルになってしまっていないかを確認する必要もあると思うのです。

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