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バイマンスリーワーズBimonthly Words

苦難こそ福門なり

1997年11月

またもや景気の後退が本格化してきました。1990年をピークに後退していった日本経済は、一旦、底を打った感がありましたが、4月以降の消費税率引き上げ、特別減税の廃止、公共投資抑制といった政策が引き金となって一般消費がぐっと冷え込んでいます。食料品などの生活必需品においても消費者の財布のひもが固くなっているぐらいですから、住宅関連、自動車など耐久消費財は単価と数量面における「負の相乗効果」が働いて大幅な売上ダウンになっています。宝飾品や呉服といった業界では前年比80%だったら健闘、60%であたりまえという異常な状態です。このような状態が続くと完全に景気底割れとなり、社会全体が混乱してしまうでしょう。経済学者や評論家が悲観的な世紀末予測をしたり、倒産する企業の予想を書いた雑誌が売れるという、暗い話題が多いのは誠に残念です。

ここで我々企業のリーダーが認識すべきことは、「勝ち組」と「負け組」に世の中の企業がはっきり色分けされてきたことです。これは業種や規模のことではありません。
勝ち組の企業は各々の事業分野で自社の独自性を発揮し、安定した財務状態を地盤に益々成長スピードを上げています。

一方、事業分野が衰退傾向にある上に、財務基盤が弱く、財務をコントロールする力のない中小企業は残念ながら「負け組」になります。このような負け組企業のうち、よほどの技術力か独自性がある企業でなければ生き残れないことが確実になってきました。

財務基盤が強いというのは多くの資産があることではありません。上場企業の大型倒産がそれを証明しています。少ない資産でも長く安定している企業はあちこちにあります。財務の安定性とは要するに資金バランスのことです。高度成長時代には多少財務状態が悪くても、多くの事業分野が成長過程にあり、その追い風に乗って経営することができました。しかし、これからは規模の大小を問わず、資金バランスをコントロールする技を企業経営者が持っているかどうかが鍵となってきます。

このように考えると、経済改革の本番を迎える中小企業にとっては「財務の安定度」と「事業分野の成長性」という2つの観点が不可欠である事が分かってきます。「財務の安定度」とはこれまでの経営に対する評価であり、「事業分野の成長性」とは将来性に対する評価になります。
この過去と将来の2つの側面から捉えた「門」が企業の前に立ちはだかっているように感じます。そこで自社の前にはどんな「門」があるのか、現状を正しく捉えておきましょう。

 

経済改革本番を迎えての緊急提言! ~あなたの会社はどの門をくぐるか?~

―5つの門のくぐり方―

 

今は、どんな企業の前にも何らかの門が立ちふさがっているようです。いかがでしょうか、あなたの前にある門はどれだか判定できましたか? そして、どのようにしてくぐっていけばいいのか考えていただきましたか? その門の中は、暗くて長いトンネルのようになっているかも知れませんし、途中に落とし穴があるかも知れません。いずれにせよ、私達はその門をくぐって先へ進むしかないのです。

ベストセラー「生きがいの創造」の著者である飯田史彦・福島大学助教授が次のように語っています。
「経営者の皆さんは決して偶然に社長の椅子に座っているのではありません。『あなたが、その会社の経営者になることによってしか果たし得ない、また、あなたが果たしてこそ意味のある、重大かつ貴重な役割』が確実に存在するからこそ、その地位に就いているのです。そして、成功や安楽よりも、失敗や挫折にこそ、貴重な価値があるのです。幸いにも人生という人事制度は勝ち抜き制ではなく、敗者復活制になっていて、何かのきっかけで心がけさえ変えればこれまで間違った選択肢を選んできた人でも、すぐに望ましい方向へ戻ることができるのです。」

“今年が正念場だ”という企業が少なくありません。勝ち組の会社でも今は一旦、身をかがめてから門をくぐる必要があります。一方、負け組だと思っている会社でも心がけ一つで過去の清算ができるということでしょう。勇気を出して敗者復活戦に臨もうではありませんか。開き直っては駄目ですし、もちろんここで悲鳴をあげてしまったら終わりです。粘り強く信念を貫けば必ずや成就します。

“苦難こそ福門”なのです。目の前に苦難の門が立ちふさがった時は、「福」がすぐその後ろに近づいている時だと考えればいいでしょう。門の向こうに開けている素晴らしい世界を目指して、門をぶち破るくらいの勢いで来年を迎えようではありませんか。

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