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バイマンスリーワーズBimonthly Words

三次元で考えてみよう

1999年07月

「三」とは生きる知恵を与えてくれる不思議な数字

京セラ名誉会長の稲盛和夫氏は、何が優れていたら人生で成功するのかについて考えた結果、次のような方程式にたどり着いたといいます。

人生の結果 = 能力 × 熱意 × 考え方

「能力」と「熱意」には0点から100点まであります。能力のある人は過信して努力を怠りがちになり落とし穴がありますし、逆に能力の点数が十分でない人が良い結果を出すには人の何倍も働く勤勉さや熱意が必要となるでしょう。仮に超一流大学を卒業したAさんの能力が90点で熱意が30点、一方のBさんの能力は60点だが熱意も60点だとします。足し算だと両者共に120点ですが、掛け算だと大きく違ってくるのです。よって人生とは能力と熱意の掛け算であり、その結果は幾何級数的に違ってくるというのです。そして、最後の「考え方」には、プラスとマイナスがあって、能力と熱意がどれほど高くても考え方がマイナス方向だと、結果はすべてマイナスになってしまう。せっかくの能力と熱意が悪い方向に働くと大泥棒にもなってしまうこともあるのです。

さすが稲盛教の教祖と言われるだけあって経験に裏打ちされた説得力のある見解です。

政界や財界リーダーの精神的支柱となった故安岡正篤氏は「思考の三原則」を提唱しました。

一つは、枝葉末節にとらわれず本質を見るということ、二つは一面だけで見ないで多面的にとらえること、そして三つめは目先にとらわれず長い目で見るということです。これを公式に置き換えると、

本質的×多面的×長期的

となります。本質的とは質的なもので多面的とは量的な要素を含んでいます。そして長期的とは時間的な切り口です。

稲盛氏の見解、安岡氏の原則の中には共通点が見えてきます。概念的で混沌とした事象に対し、全く違う三つのベクトルから思考を展開しているのです。まず対局に位置するような二つの観点があって、その二つの観点とは全く違ったもう一つの観点でまとめてあるように感じます。

このように考えるとこの世に存在する事象というものは、たとえ複雑で多岐に亘ることであっても三つの角度からとらえていけば、凝縮され、整理できるようです。三つにこだわるつもりはないのですが、四つでは多すぎる、二つではあと一つ何かありそうで不安に思うのです。三という数字はどんなことでも簡潔に頭の中を整理してくれるから不思議な力を感じるのです。この不思議な力を経営に活かさない手はない、大いに活用して次なる指針を導きたいと考えたのです。

三次元思考で平成の危機を乗り切ろう

経営とはどこまで行っても応用問題のくり返しで「これが正解だ!」という答えはありません。迫り来る問題は混沌としたものばかりですから、その場に応じた最適の選択をしていくのが経営なのです。

しかし、単純に思いついたことを実行しても、労多くして実りの少ないものになり兼ねません。パソコンのソフトには素晴らしいノウハウがいっぱい詰まっていますが、そのソフトを動かすウインドウズのような基本ソフトがなければ動かないのと同じで、経営者が考えるアイデアやノウハウを引き出しやすい経営の基本ソフトが必要なのではないでしょうか。

この基本ソフトとなりそうなのが前ページにご紹介した三次元経営手法です。

三次元経営手法とは、タテ、ヨコ、奥行きの三次元から経営のあらゆる事象を捉えて、より好ましい判断を促すための経営基本ソフトとご理解下さい。特に今回は、現在の厳しい経営環境を勝ち抜くために「赤字会社にしない経営のツボ」としてまとめてみました。

三次元経営手法は「タテ」と「ヨコ」の基本的な対局要素と、全く違う「奥行き」の要素から成り立っています。タテとは「単価」であり、凝縮された「質」であり「掘下げ」という要素を持ったベクトルです。ヨコとは「数」であり、「量」のことであり「広がり」のベクトルです。そして、タテとヨコで妥当な解答が見つからなければ「奥行き」のベクトルへと展開します。奥行きではまず「外転」の発想をします。外転とは、タテでもヨコでもない発想を“外側に転がすこと”によってこれまでとは違った方法を導き出そうというものです。奥行き発想のもうひとつは「時間」という切り口です。時間的空間からタテでもヨコでもない新しい発想を導くことです。

世の中にはさまざまな考え方や手段、方法がありますがどれを採用するのも自由です。自分に最もフィットしたものを早いうちに発見して実践に使えればいいのです。一度、三次元の考え方を使って業務に取り組まれてみてはいかがでしょうか。

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