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バイマンスリーワーズBimonthly Words

作用反作用の法則

2002年09月

今ほどに企業の不祥事が連続して起こった時代があったでしょうか。

雪印食品、日本食品、日本ハムなどの牛肉関連事件、ミスタードーナツなど
中国からの輸入食品に関する事件、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)などは、
食材、水道水、火薬使用問題とマスコミから連続攻撃を受けています。

いかにいい加減な経営をしていたのかと、罵られても仕方がないような
不祥事の連続です。消費者は不信感をあらわにし、流通業者も「疑わしきは販売せず」で
次々と取引中止。雪印食品は消滅、その他も強烈な打撃を受けて急激に業績を落とし、
青息吐息の状態が続いています。因果応報…。

確かにこのような結果を招く原因が内包されていたわけですから、仕方ありません。

しかし、いかがでしょう、どれだけクリーンな経営をしていても、
叩けばホコリぐらいは出るのはあたり前ではないでしょうか。
あなたの会社は「誰に、どこを突かれても問題なし!」と言い切れるでしょうか。

~ 水清ければ魚住まず ~

企業とは所詮、人間の集まりですから大なり小なり汚点はあるものです。

つまり、今回のような不祥事は今に始まったことではないということです。
大手企業の場合、中小企業のそれと違って社会的影響が大きいために
マスコミの格好の標的になります。

これまでは起こっていた不祥事を上手に握りつぶしてきたのでしょう。
が、今回は“誰か”に死角をつかれた事件である可能性が少なくありません。

攻撃をかけたのは、恨みをもつ人間か、競争企業か、はたまた外国勢力なのか…。
事件の背景に何らかの力が働いていることは容易に想像がつきます。

今回の連続不祥事問題は、まさに血の出ない経済戦争、
いわゆる情報戦争が繰り広げられているのです。

マスコミを利用して企業を骨抜きにしていくこのような事件発覚は、
今後も続くことでしょう。

社長が豪邸を建てるとおかしくなる

日本マクドナルドが右往左往しています。

6月の中間決算では経常利益が前年同期80%減、会計基準の変更を考慮すると95%減になります。

BSE(いわゆる狂牛病)問題があったにせよ、
平日にハンバーガーを半額の65円とするセールを2月に中止したことが大きく響いています。

業界のガリバー的存在にまで登りつめたマクドナルドなら、日本の外食産業全体のことを考えた
横綱相撲をとって欲しいところですが、2月にはハンバーガーを80円とし、半年後の8月から
一挙に59円に下げるという無節操な状態。

一般の消費者は安さ大歓迎!となるでしょうが、ついこのあいだまで80円で売られていたのは
何だったのか?と不信感も残ります。マクドナルドは59円で効果をあげるかも知れませんが、
この低価格政策が外食産業全体に波及し、これまで以上にデフレが進行する要因になりかねません。

爆発的な成長を遂げたユニクロの既存店ベースの売上が、前年同月比で40%以上落としています。
昇るのも早ければ、降りていくのも、あっという間です。

実質的にユニクロの創業者である柳井社長は代表権のある会長に退き、後任には入社4年目
の玉塚常務が昇格することになりました。記者会見の席上、業績が急激に落ち込んだ原因について
柳井社長からはビックリする発言が…。

「“消費者はユニクロに飽きたのか?”というマスコミの報道がユニクロ離れに拍車をかけた」

衰退するアパレル業界で新しいビジネスモデルを示した雄であるユニクロのトップが
このような発言をするのは残念でなりません。

ユニクロが急成長した最大の理由は「高品質で低価格」ではありません。
マスコミの威力なのです。「品質が良くて安い」「どこどこに出店した」と、
こぞって、それも無料でマスコミが取り上げました。

その広告効果を金額換算するなら“何億”という単位では済まないでしょう。

マスコミのおかげで成長したのに、その恩人を悪者にする発言。
マスコミ関係者はこの発言をどのように感じているでしょうか。

そんな非常事態の最中、柳井社長は都内に2600坪、
建物を含めてなんと100億円に近い豪邸を建築中だといいます。

実業界には「社長が個人で豪邸を建てると会社はおかしくなる」という通説がありますが、
はたしてどうなりますか…。新社長の玉塚氏が捨石にならないことを願うばかりです。

成功の復讐

経営の世界には「成功の復讐」という言葉があります。

過去の成功体験におぼれ、同じ手法をとることによってしっぺ返しを食らうことです。
人も企業も、自らが経験した成功パターンがあると、自然とその思考様式や行動様式を
選んでしまう。

ところが環境が変化すれば、過去の成功法則が通じなくなるのは当然なのに、
成功体験があるが故、それに固執して傷口が広がるわけです。

ユニクロの場合、強烈なマスコミ効果により本来なら顧客とならない層まで取り込んでしまった
のでしょう。実力以上の数字が上がってしまい、下降線になると同じ強さのマスコミの力が
マイナスに働いたのです。これはマスコミによる悪意のない「成功の復讐」です。

マクドナルドの例はどうでしょう。それは2年前にさかのぼります。

それまで130円だったハンバーガーを「平日に限り半額の65円」とし、値下げ前と比べて、
なんと5倍の売れ行きを記録した成功体験があったのです。

「価格でリーダーシップをとれば市場は反応する」という成功体験が“驕り”に
変質したのでしょうか。インフレを先読みした80円に対する市場の反応は冷たいものでした。
これは市場からの「成功の復讐」です。

成功の復讐とは、物理学の「作用反作用の法則」と根本は同じです。

池の真ん中にA・Bと2つのボートを浮かべ、Aに乗った人がBのボートを押すと、
Bのボートは押された方向へ進むのは当然だが、Aのボートも押した反対の方向へ進むわけです。

ボクシングでは、渾身の力を込めて打った時に喰らうカウンターパンチが
最も強烈になります。

イソップの寓話「北風と太陽」では、北風が旅人の服を脱がせようとして
強い風を旅人に吹きつけますが、旅人は飛ばされまいとしてよけいに強く服を押さえたという話も
作用反作用の法則の働きでしょう。

こう考えると、イスラエルの爆撃とパレスチナによるテロ行動が相互にエスカレートしていくのも、
作用と反作用の力が繰り返し働いているのでしょうか。恐ろしい力です。

蓄積型の作用反作用の法則

「作用反作用の法則」は、あらゆるものに働いていることは分かってきました。

ただ、ユニクロやマクドナルドのように「反作用」が素早く表われるといいのですが、
「反作用」が起こりそうな「作用」をした覚えがない、ましてや成功と呼べるような経験も
していないのに、業績の低迷を続けている企業などはどう考えればいいのでしょう。

こんな場合は、ひょっとすると「蓄積型の作用反作用の法則」が働いているのかもしれません。

子供の頃のことです。
「一円のお金をバカにする者は、一円に泣く」と、親から何度も言われました。

つまり、小さなものでも存在価値があるのに、それを認めていないと積もり積もって、
いつか自分に反動がくる、そんな意味なのでしょうか。

日頃、自分が関心を寄せていなくても、その対象は自分に対し、ずっと信号を送っている。
その信号は小さい(対象相手にとっては小さくないが)ので気が付かない。
気がつかないから行動も起こさない。

ところがその間、対象相手の中にはエネルギーが溜まりに溜まり、何かをきっかけに一挙に爆発、
こちらに大きな影響が出てしまう、というわけです。
物理学の世界に、蓄積型の法則があるのかどうかは知りません。

でも、この世の中には「蓄積型の作用反作用」が厳然と存在しているのではないでしょうか。

この法則は、まず相手から力がかかります。
これをあなたが誠実に対応しなければ、相手には欲求不満が積もります。
これが「反作用のエネルギー」となって蓄積され、何かをきっかけにして爆発、
その反動があなたにかかってくるのです。

企業の例で考えてみましょう。

ある社員が組織への不満を訴えたが、社長は大したことではないとして曖昧な対応を繰り返す。
その社員は自分の主張を聞き入れない会社に不満を鬱積させ、周りを巻き込み
増殖させていく。組織の風土は最悪となり、最後は会社を見放す社員が続出し、社長はお手上げ…。
こんな企業が少なくありません。

パート社員が同じような行動を起こすこともあります。

仕入先、外注先、満たされないお客様がこのような動きをするかも知れません。
大手企業では株主やマスコミの存在もあるでしょう。

冒頭の連続不祥事問題のほとんどは会社の実情をよく知る者の内部告発が発端になっている
でしょう。まさに「蓄積型の作用反作用」が働いたのです。

昔から“口は一つで耳二つ、聞く耳をもて”と、よく言われました。
小さな不満やとるに足らない意見もないがしろにせず、まずよく聞くことによって
「よいエネルギー」に変換することができるのではないでしょうか。

周りの人に心の耳を傾けなかったら、時と場合によっては取り返しのつかない大事件に…。
恐ろしいことです。

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