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株式会社新経営サービス

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バイマンスリーワーズBimonthly Words

主客一体

2011年11月

実りの秋です。
香りある海幸や山幸をありがたく味わう季節。
しかし、原発事故の被災地のそれは何かと敬遠される今年の秋。
大自然の恵みを犠牲にした私達の選択はなんと罪で、浅はかだったのか…。

京都のお寺の門前書きにふと足が止まりました。
~掃けば散り 払えばまたも ちりつもる 人の心も 庭のおち葉も~
まさに経営者の心の中をそのまま表わしたようなメッセージです。
掃いている落ち葉も、つい半年前には新緑の若葉でした。
解決したと思ったら、また新たに起こってくる難問。
降りかかる問題たちは、なんて憎い存在でしょう。

そう、経営者の仕事とはまさに問題解決業。
高度成長時代の経営者は、労使問題で苦労しました。
労働者が「一致団結」してストライキを敢行し、経営側と対立。
しかし、経済が停滞しだすと労使対立どころか「労使一体」となって、
コストダウンや品質管理に取り組み、競争力のある商品を世に送り出します。

ところが長引く不況で、品質が良くてもお客様は見向きもしないという難題にぶつかります。
そこでメーカーは、お客様と一体になって新たな市場を創造しようと試みました。
有名デザイナーが流行を創り出したのは、一昔前のファッション業界。
今はお客様が創り出す、ストリートファッションが主流です。

IT技術の進歩もあって企業と顧客の距離は、グッと近くなりました。
インターネット上で共同編集する百科事典サイト「Wikipedia」も便利ですし、
アマゾンで本を購入する価値は、読者によるカスタマーレビュー(書評)が大きい。
これらは供給側の努力と消費者側のボランティア精神が「主客一体」となった現象です。

「おもてなしの心」が企業成長の決め手

主人と客人が対等の関係で、お互いに啓発しながらその場を創造する「主客一体」。
それは「主」と「客」が分離している欧米流サービスとは一線を画す。
京都の祇園でのおもてなしは主客一体の思想に基づいています。

~ おもてなしの心 ~
日本特有の言葉で「ホスピタリティ」とも訳されますが、少し違う。
「おもてなし」の源流は京都で千利休が確立した茶道の精神にあります。
招かれた客人と、主人の間で交わされる「主客一体」と「一期一会」の縁。

一瞬に過ぎ去っていく「今」という時間は、二度とやってこない。
だからこそ共に過ごす時を大切にし、精一杯のおもてなしをする主人。
客人はその心を感じ取って主人を思いやり、「時間」と「空間」を楽しむ。
祇園では星の数で決める「ミシュランガイド」を拒否する店も少なくありません。

「おもてなし」の例としては、豊臣秀吉と石田三成の「三献の茶」があります。
寺の小姓であった三成は、鷹狩りの途中に喉の渇きを覚えた秀吉に対し、
一杯目にぬるめのお茶をたっぷり出し、二杯目は少し熱いお茶を、
そして三杯目には、小さな湯飲みに熱いお茶を差し出した。
秀吉は客の心を思いやる三成に感心し、登用したという。

会社は規模の大小に関わらず、結局はお客様との接点が勝負です。
手間がかかるが一人ひとりが会社を代表する社員として、
お客様の気持ちを考えて接しているでしょうか?

まずはあなたが「心のカゴ」を空っぽにする

現代社会はシステム化されたサービスが主流であるため、
今ほど、心のこもったサービスが求められる時代はありません。
~ 入我 我入 ~
仏の心が自分に入り、自分の心が仏に入る両者一体の境地。
「主客一体」には、お互いの感情移入が不可欠です。

社員同士が対立する組織に、お客様のことを考える余裕はありません。
従業員と経営者がギクシャクしているとお客様は等閑になります。
お互いの立場を理解することでチームワークが強化され、
相手を理解する心が、お客様にも伝わっていく。
では、感情移入とは具体的にどういうことなのか?

たとえば、上司と部下の関係で考えてみましょう。
上司のあなたは、部下に伝えたいことが……いっぱいあります。
一方、部下もあなたにわかって欲しいことを心の中にたくさん持っている。
ここでお互いが言いたいことを言うだけでは、争いになってしまう。

じつは人は誰でも、相手の心を受け入れる「心のカゴ」を持っています。
ところが「心のカゴ」を自分の気持ちで満杯にしてしまうと、相手の心は入らない。
そこで上司のあなたが自分の言いたいことをまず横の棚に置きます。
つまり、あなたの「心のカゴ」をいったん空っぽにします。

それを見た部下は、あなたの「心のカゴ」に、
自分の言いたいことをすんなりと投げ入れます。
すると今度は、部下の「心のカゴ」が空っぽになって、
はじめて、あなたの思いを部下の心に入れることができるのです。

人の心は時空を超えて飛んでいく

感情移入は、上司部下、お客様、仕入先でも同じこと。
企業も顧客もその行動は、すべて人間の「心」が決めている。
心の有り様が行動となり、経営者の人生、企業の運命を決定づける。
感情移入ができるようになれば、はかり知れない成果が期待できるでしょう。

人の心はどれほど距離が離れていても、ひとつになることができます。
心の中にあるものはインターネットがなくても世界中をかけめぐる。
それは時空を超えて、遠い昔の世界にまでも飛んでいく。
過去の人、そして未来の人ともつながることができるのです。

地球が生まれて46億年、人類が誕生して200万年。
そして今、私達はこの地球に70億人もの人と共に生きている。
その中であなたの周りの人が問題を抱えて、支援を求めてきています。
あなたは、そんな声に耳を傾け真正面から問題に向き合いましょう。
皆が主となり、客となることで難関を乗り越えることができます。

二宮尊徳の教えです。
~父母も その父母も 我が身なり われを愛せよ われを敬せよ~
我が身は、父母と、またその父母と臍の緒でつながり続けている。
ならば我が身こそが親の形見であり、父母も、その父母も自分と一体ではないか。
今の自分を大切にすることは、父母の、その父母の、そして未来の子供たちのためになる。

未来の子供たちとは、自分そのもの。
そんな未来の自分に対しても、私は何ができるのか…。
目先の利益にとらわれ、一人の人間として誤った判断をしていないか。
あっちこっちとぶつかりながらも、心の通った経営人生を歩んでいこう。

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