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バイマンスリーワーズBimonthly Words

足るを知る者は富む

2003年07月

あぁぁっ!また持っていかれる…

イラク戦争が一応終結し、戦後処理に動き出した世界。
実戦に参加しなかった日本は戦後復興処理の名目で経済的な負担を強いられます。

さて、今回はどれだけの資金が日本から出て行くのか。
12年前の湾岸戦争では130億ドルでしたから、当然それを上回るでしょう。

巨額の資金が出て行くのは今回だけではありません。
戦後日本が貿易で稼いだドル資金は、ことごとくアメリカに還流されています。
ドルの還流とは、高利回りをうたい文句にしてアメリカ国債や金融商品を買わせる仕組みです。
この方法に乗せられた日本の政府や機関投資家は日本より金利が高いアメリカにつぎ込んできました。

その結果、アメリカ財務省に対する日銀の融資は2000億ドルを超え、
アメリカの金融機関への預金が900億ドル、民間企業のアメリカ国債の保有残高を含めると、
日本全体でなんと3200億ドルという巨額の資金をアメリカに融通しているのです。
おそらくこのお金は戻ってこないでしょう。

ある意味で日本は金融奴隷国家になっています。
少し景気が上向きになっても、ゴソッと、ガバッと、持っていかれるわけですから、
日本経済がいつまでたっても良くならないわけが分かります。

もっと深刻な問題があります。

勝つか負けるかを賭ける企業戦略論がアメリカから導入され、日本の企業経営者が学んできました。
戦略的に企業を運営することは大切なことですが、相手を倒すことを狙った戦略は、いずれ己の身を滅ぼします。

もともと狩猟民族であるアメリカの戦略論に、農耕民族の日本の経営者が感化洗脳されていくことに
憂いを感じずにはいられません。

戦略と策略は違う

たとえば、豊富な資金で建設会社に奨励金を支払って、オール電化マンションを推進する電力会社。

異業種とのタイアップで一見斬新(ざんしん)な戦略に映りますが、はたして正しい戦略でしょうか。

消費者にとって他のエネルギーを遮断するオール電化が本当にいいのか、ガスはそんなにダメなのか。
それはたまたま業者間の利害が一致したご都合主義であり、何やら“せこい”感じがします。

日本マクドナルドの平日半額セールは大ヒットでした。
ITを駆使して、世界中から最安値の食材を仕入れてコストダウンを行った成果です。

しかしその後、急激に業績を落としたのはなぜか。平日半額セールは一見、うまくいったようですが、
その実、自分さえよければよいという発想から脱していません。

マクドナルドの低価格戦略は、牛丼、弁当、ラーメンなど他の外食産業にも侵食し、デフレを
加速させました。食材はできる限り近くから、新鮮で安全なものを調達する、いわゆる「地産地消」
が身体にも地球環境にもいいはずです。

無理な低価格政策は取引先からの反発を買い、不信感を抱いた消費者も少なくありません。
中小企業でも同じような戦略の勘違いが起こっています。

少子高齢化で葬祭事業に進出する中小企業も増えてきました。
昔と違って今の葬祭事業はセレモニーホール(葬祭場)を持つことが
不可欠になっていますが、ホール内に喫茶、飲食、ギフト用品などの
付帯サービスをトータルで自営設置するケースも多く、時には飲食物の
持ち込みを禁止しているところもあります。

飲食などの売上も同時に上がるので、一見利口なやり方のようですが、
これがうまくいかないのです。喪服を着た人が集まる葬祭事業は近隣の
住民や商店との協調が欠かせない事業です。

トータルで取り込むやり方は近隣の喫茶店、飲食店などを敵にまわすことになり、
地域で不協和音が起こります。これも“せこい”やり方で長続きしません。

旅行や観劇に招待して高額品を買わせる商法が、相変わらずいろんな業界で行われています。
いわゆる「おとり商法」と呼ばれるもので、法律には触れなくても何かと無理があります。

どんな時代になっても新手の商売を考え出しますが、狩猟型のおとり商法も長続きは
しないでしょう。

よく考えているようでも、目先の利益にとらわれた政策では何かと問題が起こります。
それは戦略ではなく、策略に過ぎないからなのです。

地球上の一人でも多くの人を治したい

目の水晶体が濁って見えにくくなる白内障の手術を、世界最先端の技術で走り続けている
赤星隆幸氏(46歳三井記念病院眼科部長)の存在が光っています。

水晶体の核を超音波のエネルギーで砕き、角膜に開けた傷口から吸引してレンズを挿入する
「超音波乳化吸引術」が米国で開発され、各国に広がったそうです。

この方法に赤星氏が改良を加え「プレチョップ法」を開発しました。
この技術は一件の平均手術時間が3分、年間にこなす白内障の手術は5000件を超えています。
今、世界で赤星氏の右に出る者はいないといいます。

赤星氏のすごいところは医師としての精神。新しい技術に必要な装置や超音波のチップも
考案しましたが、いっさい特許をとらず公開主義に徹しているのです。
どれも特許を取れば巨額の使用料が懐に飛び込むのに、儲けることは眼中にありません。
「地球上の一人でも多くの人の白内障を治したいからです」
理由は明解、迷いがありません。

もし、赤星氏が上場企業の幹部だったらどうでしょう。利益を喪失させたとして株主から総スカン
です。アメリカで世界先端の技術を学び、改良を加えて先が見えたら本来やるべきことに全力を
かける。儲けるとか、取り込む、といった“せこい”姿勢は感じられません。この姿勢が続く限り、
世界中から好ましい情報が集まり、氏を支援する輪が広がることでしょう。

お金で人を集めるのではなく、その精神に共鳴して人が自然に集まるのです。

開かれた国家アメリカには世界中からさまざまな志を持った人が集まります。科学、医学、文化、
芸術、スポーツ、そして武器兵器にいたるまで、あらゆる分野で新しい技術が開発され、世界に
発信されていきます。限りない魅力をもった国です。

ところがそこにはいつも経済的な目論見(もくろみ)、つまり商売が絡んでいることも事実です。
赤星氏はそこに楔(くさび)を打ち込みました。

自然界は、生きとし生けるものすべてが、共に生きることでバランスを保ってきました。
もちろん人間もその一つです。ところが科学技術が発達し、便利さや効率が求められる近年に
なって、そのバランスが大きく崩れています。

便利さや効率が求められる背景には、生死を賭けた企業間競争、拝金思想、煮詰めれば経済優先の
世界があるわけです。これからは「勝つか負けるか」「生きるか死ぬか」の闘争の論理ではなく、
「いかにして共に生きるか」という「共生」の考え方の方向へ、少しずつ経営のハンドルを切った
ほうがうまくいくのではないでしょうか。

量から質へ、経済的から精神的な豊かさへ

何を甘いことをぬかしておるか!とお叱りを受けそうです。でも、もう一度考えていただきたい。

市場には競争原理が必要です。競争があるからこそ会社が鍛えられ、体質が強化されるのです。
ところが、競争相手を倒して獲物のすべてを奪う「闘争」はいずれ己の身を滅ぼします。

「競争」はお互いがゴールを目指すのでどちらもレベルが上がりますが、「闘争」は相手を倒すこと
を目標にした消耗戦にしかすぎません。

たとえば肉食動物が草食動物を、草食動物が植物を欲望のまま食い尽くしてしまうと、いわゆる食物
連鎖は途切れてしまいます。満腹のライオンはシカを目の前にしても見向きもしません。
自然に生きる動物達はそのことを本能的に知っています。

ところが中途半端な智恵を持った人間がその自然の摂理に気づかないのです。

そんな人間に対して老子が箴言(しんげん)を残しています。
老子三十三章に“知足”つまり「足るを知る」というのがあります。
これは、現在の生活に安住し、なんら努力もせずに、老成したような生き方のことではありません。
全文はこうです。

人を知る者は智、自らを知る者は明なり
人に勝つ者は力あり、自らに勝つ者は強し
足るを知る者は富み、強めて行う者は志あり

他者を理解する人は知恵があるというが、自己を理解する人が本当の明知がある。
他人に勝てば力があるというが、自己に勝って初めて強者といえる。満足することを知る人は心豊か
な人で、自己に勝って道をおこなう人に真なる志がある。

なるほど・・・。

以前、座禅をした際に「生飯(さば)」という食事作法を教わったことを想いだしました。
ご飯は全部食べずに3~7粒程度の飯粒を、麺類ならば一寸までの麺を残すのです。
これを池の鯉とか鳥とか、他の生命に与えるのだそうです。

「生飯」の教えは庶民の日常生活にも浸透しました。「のこし柿」という風習がそれです。
里山や庭になっている柿をすべて採らずに、自然の恵みを与えてくださった感謝の気持ちと冬を
越す動物や鳥のために残しておくのです。昔の人々は今ほど裕福ではなく、食べ物を残して捨てる
ことはなかったでしょう。そんな時代だったのに昔の人は「のこし柿」をしたのです。

なんと豊かで、おおらかな心でしょう。

さあどうでしょう、これ以上お互いがマーケットの食い合いをし、生きるか死ぬかの戦いを続ける
のがいいのでしょうか。ボチボチでいい、経済的な豊かさよりも、周りと共生しながら精神的な
豊かさを目指す企業が出てきてもいいと思うのですが、いかがでしょうか。

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