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バイマンスリーワーズBimonthly Words

かたよらず とらわれず

2005年07月

「うっとうしい梅雨空のような社内ムードを一掃するには、数字が一番いい薬になりますよ」
業績が低迷し、ほとんどボーナスも出せない状態にある流通業を営む社長の言葉です。
たしかに数字が落ちると「○○が悪いからだ。延いては会社が悪い!」と、自分以外の人に原因を転嫁するのが一般的な社員です。そして、心の中で思ったことは不思議と相手に伝わり、当事者同士が相手の批判をするようになります。するとお互いの協力心が薄れ、お客様とのトラブルや連絡ミスに繋がっていきます。このような結果として業績が落ち込んでいくのです。そして、業績が上向いてくると逆の現象になっていくだろう、というのがこの社長の期待です。

企業の業績というものは組織の状態がおかしいから上がらないのか、それとも業績が上がらないから組織の状態がおかしくなっていくのでしょうか…。これはニワトリか卵かの議論になっていますが、いずれにしても早いうちに悪の循環を食い止めないと、本当にデス・スパイラル病(死に至る悪循環現象)にかかってしまい取り返しがつかなくなります。
悪の循環が止まるか、はたまた増幅させてしまうかはトップの出方にかかっているでしょう。
たとえば、業績低迷から経営者がガミガミと社員を怒鳴りつける日が続いたとしましょう。相当ストレスが溜まっていたのか、あちこちの部門でやるので会社全体が険悪なムードになっていきます。上司部下のタテ関係、仲間や他部門とのヨコ関係の信頼関係が崩れはじめ、社員間のコミュニケーションができない状態に陥ります。
企業のコミュニケーションとは血液のようなもので、体中を駆けめぐり、筋肉や各臓器の働きを促進する重要な役割を担っています。コミュニケーションが円滑に行われないとミスが発生しやすくなり、各部門の働きはもちろん、組織全体のパワーも低下します。
こんな悪循環は経営者が自ら先頭に立って、善なる循環に戻さなければなりません。まず業績を上げるためにみんなの先頭に立ち、組織コミュニケーションの好循環に務めるのです。
ところがそんな大切な役割を担っている経営者なのに、その周りには足を引っ張るような条件がいっぱいあることが分かってきました。それが「3つのK」です。「会社(Kaisha)」「家庭(Katei)」「健康(Kenko)」の「K」であり、それぞれがまた3つのKに分かれているというものです。

関心事の偏りを是正し、心を一つに留めない

これら3K×3=9Kの事象は、何らかの影響をうけて大きくなったり、小さくなったりしています。これを「会社(Kaisha)」の場面で考えてみましょう。赤字に転落した経営者は何とか黒字に戻そうと「企業の経営」のことで頭の中が一杯になり「組織の経営」や「事業の経営」のことがおろそかになります。このように会社の状態が悪くなるのは「企業の経営」「組織の経営」「事業の経営」の3つの力がバランスを崩し、どれかに偏(かたよ)ることから始まるのです。

会社の状態が良くないと、経営者の調子までがおかしくなっていきます。いや、中小企業の場合はその逆で、経営者の調子がおかしくなるから、会社の状態が悪くなっていくのでしょう。中小企業の経営者にとっては「会社(Kaisha)」「家庭(Katei)」「健康(Kenko)」という大きな3つのKのバランスをとることが最も難しいことかもしれません。

たいていの経営者は「会社」のことで頭の中が一杯で「家庭」と「健康」はその犠牲になっています。この状態をいつまでも放っておくと「上様」や「子供」から何らかの反発が起こってきます。そして、自分の心や体調までがおかしな状態になってきます。このようにして経営者個人の「家庭」と「健康」という個人的な問題が会社全体の経営に大きな弊害となって襲いかかってくるのです。

こんなことがあってはなりません。ですから経営者は常日頃から「家庭」と「健康」に関するケアをして、偏りを是正するようにしましょう。

そのために生活習慣の中にケアのリズムを作ってはどうでしょうか。週に一度は家族そろって食事をする、早朝散歩をして運動をする、といったことでいいのです。「経営者は家庭や健康のことよりも、いつも会社の経営を優先させる人間でないと務まらないよ」というご意見もあるでしょう。

しかし、これからの時代を勝ち抜く経営者は、もう一段高いレベルを目指していただきたいのです。

現代社会において「経営」という仕事は、優秀な人間の持っている時間や能力、そして人格までも奪ってしまう魔物でもあります。経営者である前にひとりの人間であるあなたは「経営」という魔物に心を奪われてはなりません。経営という仕事の奴隷であってはならないのです。

経営の仕事は義務的にやっても成功しませんし、無理に考えた理念のもとでは楽しくもありません。経営で成功するために、経営という仕事にとらわれないで欲しいと思います。

子供は泣いていてもすぐに笑い、叱られてもすぐに忘れて次のことをやっています。金縛りにかかったように一つのことに心がとらわれていません。気持ちが一つの所に留まらず、心が自由に遊んでいる子供の心は、なんとおおらかなのでしょう。子供の心が「とらわれない心」の見本のように思います。

大切にしたい、かたよらない心、とらわれない心…。

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